あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
毎年、新年の最初にどのCDを聴くかということにささやかなこだわりを持っていますが、今年は静かにスタートしたいという気分で、年末に購入したイザベル・ファウストのヴァイオリンによるバッハの無伴奏ソナタ&パルティータから、ソナタ第3番で始めました。
当代きってのトップヴァイオリニストの一人であるイザベル・ファウストのバッハは、以前から必須の購入候補でありながら、何かの都合でつい順送りになっていたために、年末ついに手にしたときは聴いてもいないうちから目的を達成したような気分でした。
以前、イザベル・ファウストの演奏に初めて接したときは(ベートーヴェンの協奏曲とクロイツェル)、慣れの問題もあってか、クオリティは高いけれども、なにやら妙に落ち着き払ったような演奏という印象を受け、それが少々無愛想というか可愛気がないような気がしたものです。
しかし、繰り返し聴いていくうちに、しだいに彼女の透徹した演奏スタイルというものが了解できてきたのか、聴く毎に印象が変化していきました。
ドイツの演奏家ということもあってか、熱っぽい語り口の演奏ではなく、あくまでも音楽の枠組みがきっちりと張り巡らされ、そこに彼女なりの練り上げられた音楽が理知的に組み上がっていくというもので、正確な設計図をもとに確かな工法によって建てられた繊細な建造物という印象です。
ただし、イザベル・ファウストのすごいところは、それが決して四角四面なものでは終わらず、あくまで自然体の魅力ある演奏になっているところが、いかにも現代の好みにも合致して高く評価される所以だろうと思います。
深い精神性と清らかな静寂感、ピリオド奏法も取り入れ、すみずみまでゆるがせにしない第一級の演奏精度とくれば、どこか日本文化にも通じるものさえ感じます。その音色も艶やか一本なものではなく、自然な美音の中にどこか枯れた響きのあるところも日本人が好むものかもしれません。
純粋な好みから言うと、やや整い過ぎという面もなきにしもあらずですが、これほどの精緻な演奏でありながら、固さや息苦しさがまったくないところは大したものだと思います。
*
新年にあたって少し話題を変えますと、昨年末に視たテレビ『たかじんのそこまで言って委員会』に出演した櫻井よしこ女史が、「人生ってのは迷わないでひたすら行かなくちゃいけないときがあるんですよ。そのときに迷わないで行けるかどうかが、その人の人生を決めてしまうんです。」と言い、なるほど尤もなことだと大いに膝を打ちました。
実行は難しいですが、極力迷わず前進していきたいものだと思います。
本年もよろしくお願い致します。
続きを読む