カレンダー

日本調律師協会が作られるカレンダーが素晴らしいことは以前のブログに書きました。
月ごとにマニアックなピアノの美しい写真が掲載されていることに驚いたと書いたら、このブログがきっかけで時々メールのやり取りをする方からご連絡がありました。

昔のものもみてみたいと書いたのですが、あくまで機会があればという程度の軽い気持ちだったのですが、その方は手許にあるのでよかったらお送りしましょうか?というありがたいことをお申し出をくださったのです。
なんだか厚かましいような気もしたけれど、見てみたいことは事実だし、せっかくのご厚意なのでお言葉に甘えて送っていただきました。

封筒を開けると、なんと昨年を頭に3年分も入っていてびっくり!
昔の聞いたこともないようなメーカーのピアノが次々に登場するのは見るだけでも価値があり、最後のページには2016年/2017年は「浜松楽器博物館」、2018年/2019年は「武蔵野音楽大学楽器ミュージアム」とあり、大きな組織がきちんと保存しているピアノというわけで納得でした。
つまり、これらは日本に存在しているピアノというわけで、いずれもが過去に何らかの理由で日本にやってきたピアノ達ということになるのでしょう。
昔のほうが数は圧倒的に少ないだろうけれども、マーケテイングだなんだということがないだけに、ピアノにしても多種多様なものが輸入されていたようにも思われ、現代は「多様性の時代」などというけれど、そうとも言い切れない側面もあるような気がしました。

現代の日本で、これだけ多様なメーカーのピアノが入ってきても、まず需要もないだろうし、当のメーカーもなくなったりで、ほとんどが有名ブランドのもので絞められるし、なにより国産量産ピアノの普及によって全国津々浦々まで埋め尽くされ、さらにはそのピアノさえも引き潮となって数を減らしていっているところでしょう。


カレンダーに話を戻すと、毎年いただく海外メーカー系のカレンダーでよく目にするものは、デザインやレイアウトなど制作の経緯は知らないけれど、見るたびに首を傾げるほどセンスがなく、とても使いたくなるようなものではない。
また、今年は日本メーカーのものもたまたま入手しましたが、さらにダサく、見たくもない音楽系タレントのような人の羅列で、いいカレンダーというよりは「ああ、この人達がこの会社と深いつながりがあるんだな」と思えるだけの、自分が使うことはまったくイメージ出来ないようなもの。
どうしてこんな感覚がまかり通るのか、まったくもって理解に苦しみます。

それにひきかえ、この日本調律師協会のカレンダーは本当にすばらしく、普通はカレンダーなど用済みになればゴミ箱行きですが、なかなか捨てる気にもなれません。
どういうカレンダーを作りたいかが明快で、必要以上の狙いが盛り込まれていないことも、却ってこの協会に交換を抱けるし清々しさがあります。
これだけ珍しいピアノを題材にしていれば、いつかネタ切れになるのかもしれないけれど、できるかぎり続けてほしものだ願っています。


近年は、年末といってもカレンダーをいただく機会は少なくなったし、いただいても以前のように単純に部屋に架けて使うということはなくなったのではないでしょうか。
最近は企業や団体なども、カレンダーを作るという恒例行事じたいが激減してるそうで、むかしは筒状に丸められた使わないカレンダーの山が積み上がっていたものですが、ここ最近はそれはすっかりなくなりました。

聞くところによれば、企業も経費節減の折柄、費用ばかりかかってタダで配布しても、大半が使われることなく廃棄されるオリジナルカレンダーというものが、早々に整理の対象になったようです。
いっぽうで、使う側も、絵や写真付きのカレンダーというものが流行らなくなり、実用に徹した文字だけの機能的なカレンダーが好まれ、さらにそれが100円ショップなどで大小様々に売られるものだから、もはや観光写真や見飽きたドガやルノワールの絵がついたようなカレンダーを無抵抗にぶら下げているところなど、ほとんど見なくなったような気がします。

企業カレンダー全盛の頃には、一部にはデザイン優先の気の利いたいいカレンダーもありましたが、全体的傾向としては大同小異、とりわけ音楽関係のそれはセンスがなかったという記憶しかありません。
それでも比較的まともだったのが、グラモフォンのずっしり重い大判カレンダー。
カラヤン、ベーム、ポリーニ、アルゲリッチといったこのレコード会社所属のスター達の写真が12枚、マットな黒ベースに、墨一色で仕上げられたもので、これだけは見るのがちょっと楽しみではありました。

それでも、実際に部屋にかけて使ったことは一二度あるかないかで、結局実用性が低いために使わず、もったいないといって何年もとっておいたりしたものの、最後は廃棄処分に鳴るだけ、それが大半のカレンダーの運命でしょう。

そんな中、日本調律師協会のカレンダーは久々に見るのが楽しい貴重なもので、資料性も高く、これは可能な限り保管していくだけの価値のあるものだと思いました。
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