東京ピアノ巡り-おまけ

【銀座山野楽器】
最終日、飛行機が最終便で少し時間があったので、急に思い立って寄ってみることに。

ベヒシュタインConcert 8、スタインウェイV-125、ベーゼンドルファー120、ヤマハSU7をほんの少し触りました。
アップライトの横綱揃い踏みのようで、むろん素晴らしく、音も弾き心地もいかにもという感じに整っているところは、いずれも日本式にお行儀よくさせられて店頭に並んでいる感じ。
輸入物は500万円前後、SU7はヤマハアップライトの最高峰で240万円。

ベヒシュタインとベーゼンドルファーは本来もっとそれぞれの個性や持ち味があっていいような気もしましたが、ここでは端正に整っていることのほうが求められるのか、腕利きシェフの料理というよりは、リッチだけどクセのない一流ホテルのディナーみたいで、それが日本人的な高級品の見せ方なのかと思います。

そんな環境でも個性を隠せないのがスタインウェイとヤマハでした。
スタインウェイはあのブリリアントに通る中音から次高音、美しく引き締った官能的な低音など、ヨコのものがタテになっただけで紛れもないスタインウェイであることに感心させられました。
ヤマハも、さすがにこのへんになるとひじょうに美しく、ヤマハ最高ランクの材料を使い、注意を払いながら作られたヤマハの逸品というのは触れるなりわかりましたが、表情にはやや乏しいことと、低音の巻線部分になるとヤマハらしいビーンという、多くの日本人には耳慣れたあの音がするあたり、やっぱりヤマハにはヤマハの遺伝子があることを痛感しました。

どのピアノにも「ご試弾の際は…」の札が鍵盤上に置かれているので、お店の方に申し出るとすぐに応じていただきましたが、その札を外しながら「いちおう商品ですので、あまり長時間のご試弾はご遠慮いただきたい…」というようなことを言われました。

もとよりそんな気はないし当然の申し渡しとは思いましたが、考えてみれば試弾をいいことに、お店の商品を延々と弾きまくる輩もいるのだろうし、実際そんな被害にも店は遭ってきたのだろうと察せられました。


話は変わり、マロニエ君はかなりの車依存人間なので、東京滞在中もレンタカーを利用しました。
人によっては「エー、東京で車なんて却って不便、こわい、道がわからない、電車のほうが便利、なんでわざわざ!」といったようなことを言われますが、幸い道はだいたい頭に入っているし、駐車場探しなどは多少あるけれど、それでも実際には言われるほど大変でもムダでもなく、なにより車があるのは圧倒的に「楽」です。

昔に比べると東京は車の密度がずいぶん減ったのか、ほとんど渋滞のようなこともなく、昼夜とわずどこにでもスイスイ行けるのでむしろ自由度が広がり、しかも車に乗っている間はシートに座っているから休憩にもなるし、外部と遮断されたプライベート空間でもあり、マロニエ君にとっては快適でしかありません。
これが移動のたびに駅まで歩き、人の波に揉まれて、階段やエスカレーターを上ったり下ったりするのかと思うと、個人的にはとても自信がありません。

とくに夜、気ままに出かけたりドライブもできるのは車があったればこそで、個人的には圧倒的に時間を満喫できます。

夜、日用品を買うのに、豊洲にある大きなホームセンターに行ったり、遠巻きにしか見たことのなかった東京スカイツリーがどれほど高いのか見に行ったり。
こういう気ままな動き方は、電車や地下鉄ではなかなかできません。
その、東京スカイツリーですが、たしかに立派なタワーであることに異存はないけれど、夜の照明で飾られた様子などは上海などを連想してしまい、個人的には東京タワーのほうがずっと好きだなぁと思いました。
エッフェル塔には及ばないけれど、今にして眺めてみればよほど趣があり、昭和生まれにはしっくり来ますね。

以前は週に二〜三回は通っていた目黒通りや環八などは、ずいぶんと景観や雰囲気が変わり、交通量も減ってへえと思ったし、クラビアハウスに行くのに通った第三京浜にいたっては、鄙びた地方の高速道路かと思うほど交通量はガラガラで、これにはかなりびっくり。
以前の東京は、車といえば常に渋滞との戦いで、少しでも進めるルートを考えることに頭をフル回転させながらの運転でしたが、今やどの道もあっけないほど走りやすくなり、ちょっと肩透かしを喰らったようでした。

車を返却した最終日のみ、やむを得ず電車での移動を余儀なくされましたが、マロニエ君にとっては慣れないこともあってやはり大変です。
どこどこへ行くには何線に乗って、どの駅で乗り換えるかなどと考えて、実際、歩き量も疲れ量も倍増。
今はカーナビもあるし、車のほうがはるかに安楽と思いますが、なかなかこの点は賛同者がきわめて少ないのが不思議です。
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