チャイコフスキーコンクールでの衝撃デビューとなった中国製ピアノの「長江」。
その音は実際の空間ではどんな鳴り方をするのかわからないけれど、少なくともネット動画で聴く限りは、ちょっと前のハンブルクスタインウェイ風で、強いていうなら、現在のスタインウェイよりもやや重みのある感じさえあるような…。
全体のプロポーションはもちろん、椀木の微妙な形状、他社に比べてやや上下に薄いボディの側板から支柱がはみ出ているあたりまでそっくりだし、突上棒なんてハンブルクスタインウェイそのものという感じです。
それでもしや…と思ったこと。
それは長江ピアノの登場と、スタインウェイのマイナーチェンジには、因果関係があるのでは?ということ。
あくまでマロニエ君の個人的な想像の範囲を出ませんが、長江が世に出てくることを察知したスタインウェイが、差別化のためにディテールの変更したということも、まったく考えられないことではないような気が…。
折しも、スタインウェイはニューヨーク製とハンブルク製の共通化という、二重の意味合いもあったのかもしれません。
新しいハンブルクのDには、ハンブルクだけの伝統であった大屋根を止めるL字のフックが無くなり、それにより、もともと無いニューヨークとの共通化にもなるでしょうし、長江との差別化という副産物にもなる。
突上棒もニューヨーク風の二段式に形状を変えたので、長江が三段式のハンブルクデザインをいただく。
長江のほうは、前足がやけに前方寄りになっていると書きましたが、これはスタインウェイのコピーじゃないんだというアリバイ作りのための、意図的な位置ずらしではないかと思うのですが、これもあくまで想像。
コンクールのステージなので、譜面立てのデザインがわからずネットで探したら、あー、やっぱりハンブルクスタインウェイのスタイルで、これもスタインウェイのほうが形を変えてしまっています。
この真相は那辺にあるのか、似すぎることを嫌がってスタインウェイのほうが形を変えて逃げているのか、あるいは両社である種の合意が裏で成立しているものなのか、疑いだしたらキリがありません。
そもそも、中国のピアノといえばパールリバーとかハイルンなどしか有名どころは知らなかったところへ、いきなり長江というブランドが世界のステージに躍り出てきて、きっと業界でも驚きが広がっていることでしょう。
調べると、どうやら2009年の創業のようで、わずか10年で国際コンクールの公式ピアノに認められたあたりも、いかにも中国らしい巨費投入と技術模倣によるタマモノなのか、常識ではあり得ないスピードですね。
長江ピアノのサイトを見ると、意外なことに人民元での価格が出ており、円換算すると、188cmモデルが約500万円、212cmモデルが約580万円、275cmモデルが約1550万円となり、なんか微妙なプライスですね。
前2つの価格からすれば、275cmも900万円台ぐらいでは?という気もしますが、コンサートピアノが安すぎると面子に関わるからあえて高く設定されているのか、そのぶん品質も違うのか…どうなんでしょう。
因みにこの3モデルは、それぞれスタインウェイのA型、B型、D型にほぼ該当するサイズで、やはり直球で中国版スタインウェイのようです。
ま、F-35の模造品といわれるステルス戦闘機まで堂々と作って飛ばして配備してしまうお国ですから、それに比べれば、たかだかピアノなんぞ驚くにはあたらないのかもしれませんが…やっぱり驚きました。
いずれにしろ、ピアノの世界も相当へんな事になってきているようです。
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