パリの様変わりは、おそらくはパリだけのことではないのでしょう。
いつからということはわからないけれど、ヨーロッパはどこもかつての輝きを失っている気がします。
マロニエ君はとりあえずパリの状況に仰天して別の友人にその話題したところ、彼の知る学生でヨーロッパに留学経験のある人は、大抵何度かは強盗被害みたいなものに遭っているのが普通!?だと言われてしまい、「だったら、治安に関しては北京や上海のほうがはるかに安全では?」と言うと、「もちろん!」とこともなげに言われてしまいました。
まるでこちらの認識が遅れているかのように!
少なくとも20世紀までの、文化の中心である憧れのヨーロッパというものは、実際にはかなり失われてしまっているようで、留学などするにしても、治安に関してはかなりの覚悟が必要とのことで本当にびっくりしました。
曰く、テレビなどでよくある街角歩きのような番組では、切り取って編集し、いいところだけを作り上げるだけの由。
出演するタレントなどは、一見自由に動き回っているようにみえるけれど、スタッフなど常に周りから守られて、撮影隊も集団で行動するため、それがひとつの防御形態になっており、表面だけを見て気軽に個人旅行などをするのはリスクが有るとのこと。
べつに行く予定もなかったけれど、マロニエ君のような全身油断まみれのような甘ちゃんが立ち入るところではないようです。
こうなる背景のひとつは、移民問題や、あまりに行き過ぎた経済至上主義が世界中に蔓延した結果だというのはあると思います。
なにかといえば経済々々と、世界中そのことばかり。
そうなってくると、文化や芸術は直接的にお金になるものではないから、どうしても二の次になり、価値観の多様化とあいまってじわじわと価値を失い、価値を失えば豊かだった土壌は痩せて、新しい芽は出ないばかりか既存のものまで次々に枯れていくだけということなのかと思います。
そういえば、10年ぐらい?前のことですが、新聞紙上である記事を見たことを思い出しました。
福岡県出身の油彩画家の方で、長年パリで活躍して来られたという方で、年齢的にもまさに活動の絶頂期というタイミングで、パリのアトリエを引き払い、故郷の福岡県のどこか(お名前も場所も忘れました)に戻ってきたので、それを機に個展を開くという記事が載っていました。
その方のインタビューがありましたが、細かいことは忘れたけれど、その方が若いころ渡仏した頃からすると、近年のパリのあまりの変質ぶりに大いに落胆させられた。
年々芸術的な雰囲気が失われ、殺伐として、パリはもうあのパリではなくなった。
これ以上、自分がそこに留まる意味を感じられなくなったため、この度の帰郷となったという意味のことが述べられていました。
この記事を見た時は、へぇ…とは思いつつ、芸術家特有のちょっとしたことへのこだわりや気まぐれ、あるいは失礼ながら自分自身の行き詰まりもあるのでは…ぐらいに思っていました。
しかし、昔からパリの芸術と文化をリスペクトしていたその友人の、100年の恋も覚めたようなその様子を見て、これはやはり本当らしいと思うに至りました。
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このところ日本への外国人観光客がずいぶん増えているようで、しかも多くがまた訪れたいという好印象を抱いて帰っていくとのことで結構なことではあるけれど、マロニエ君は正直いって不思議でなりませんでした。
日本のどこがそんなにいいんだろう?と日本人がこう言ってしまっちゃおしまいですが、まず安全で、人もそう危なくはないというだけでも日本の魅力なのかと、なんだか思いもしなかったことから納得できたような気になりました。
昨日もニュースで、海外からの旅行客が日本で落し物をしたところ、届け出があって戻ってきたというようなことを絶賛していましたが、こういうことが世界から見れば文化なのか?
ついには、遺失物を本国の持ち主へ送り返すビジネスも開始されるとかで、たしかに日本ならではのことかもしれませんね。
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