ピアノユーザーが技術者さんに依頼するピアノの主たるメンテは、一般に「調律」のことであり、この言葉にすべてが集約されている印象です。
しかし、実際に必要なことは調律・整調・整音という基本的な作業項目があり、それ以外の調整や修理なども必要に応じて行う必要が大いにありますが、ピアノという楽器固有の不思議というか、慣習なのか何なのか、概して調律さえやっていればいいというのが一般認識のようです。
さらに不思議なことは、上記の3つの中で、まともに料金として請求できるのは調律だけで、整調・整音は調律の際のついでのサービス作業が当然のように捉えられており、まるで車の整備に出した際に洗車してもらうようなもので?
よって、これを単独で料金請求しようものなら、お客さんはぼったくられたかの如くに感じてしまうかもしれません。
私が思うところでは、家庭のピアノで最も大事というか、技術者さんに来ていただいたからには、なにより集中的に取り組んで欲しいと思うところは整調で、ちょっと極端な言い方をすれば、その仕上げに調律もやってもらうというぐらいな感覚です。
弾きやすいタッチ、思いのまま手になじむタッチは、日ごろ接するピアノはなにより重要と思うからです。
技術者は専門的な修行を積んで、その技術によって対価を得る技術のプロであり、整調であれ整音であれ、いずれもれっきと仕事であるし、整調を徹底的になるとなると、これが最も時間を要することでですが、それらの重要性はほとんど無視されているのが現実でしょう。
結局は調律をして、それ以外のことは手早く済ませて切り上げる、あるいは調律以外は露骨に何もしないという人もおいでだとか。
技術者としてそういうスタンスはどうかという意見もあろうかと思いますが、対価を得られない仕事をそうそうやってられるか!という言い分もあるわけで、やはり技術に見合った、正当な料金体系というものが必要だろうと思います。
すでに固定化したユーザーの「調律」への認識を変えていくのは難しいでしょうが。
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