大屋根の磨きの最中、技術者さんのスマホにはしばしば電話が入るので、その度に作業は中断を余儀なくされますが、すぐ側なのでいやでも話し声が耳に入ります。
どうやら、電話の主は新たにピアノを買うべくお悩み中らしく、数台の候補があるようで、モデル名からそれらはディアパソンのUPのようでした。
この技術者さんはとくにディアパソンに通じておられることもあり、モデルごとの特徴などを丁寧に説明されていますが、なにぶん中古のことなので、現物を見ないではそれ以上はなんともいえないと繰り返し言われています。
話の様子ではその音源はYouTubeにあるらしいのですが、「そんなものじゃわかりません」「答えられません」「現物を見て判断されるしかありませんよ」といったことを何度も言われており、至極尤もなお話です。
サイズや色などから、精一杯の説明をされていましたが、終わりのない会話にだんだん疲れられたのか、ようやく話が済むと深い溜息をつかれました。
おおよそのことはわかったので、ちょっと話を向けてみるとまさにそのとおりでした。
「私でよかったら夜その動画見てみましょうか?」というと、それはありがたいとばかりに折り返して電話されて、電話機を渡されて私もその方と話をして、その夜さっそく見てみることになりました。
それは関西の有名なピアノ店で、なんとディアパソンのUPだけが一気に4台も紹介されているものでした。
1台は猫足の125cm、残る3台は132cmですが、ほとんど黒に見える杢目で枠飾りのついたタイプが2台と、もう一台はプレーンなスタイルのマホガニーのピアノでした。
4台とも状態も悪く無い(ように思える)ピアノで、あとは予算と見た目の好みで選ばれたらいいのでは?と思い、その旨を技術者さんに伝えました。
強いて言うなら、125cmはそれ自体のバランスはいいと思ったものの、3台の132cmに囲まれてしまうと、どうしてもひとまわりスケールの小ささがわかってしまうのは、致し方ないところがありました。
ただし、それはあくまで比較するからであって、125cmも普通にいいピアノだと思ったし、さらに132cmに共通しているのは、あきらかに余裕があり、広がりのようなものを備えているなぁと感じるところでした。
ちなみに、以前から思っていたことですが、ディアパソンのUPの中でもこの黒い杢目+角窓のモデルは、色合いスタイルともに重厚なアンティーク調でえもいわれぬ風格があり、なかなか魅力的な一台だと思っていましたが、あらためて目にして「やっぱりいいなぁ!」と思いました。
さらにこの2台、見た目はまったく同じですが、一台はアグラフ仕様でもう一台は普通のタイプというのも面白い違いでした。
音の差は、個体の差なのか、アグラフの効果なのかはわからなかったけれど、アグラフ仕様のほうが若干ですが音の腰が座っているように感じましたが…大差ではなく、なにしろ動画での判断なので、それ以上のことはいえません。
現物に触ったら印象も多少違ってくるかもしれませんが、最近ではネットで見ただけで中古ピアノを買う方も少なくないのだそうで、良し悪しの問題ではなく、そういう時代になったということのようです。
動画とはいえ、ディアパソンの中古UPを4台同時比較というのは初めてだったこともあり、とても面白い経験でした。