偶然をもうひとつ。
録画設定しているTV番組は、視る機会のほうがはるかに少ないから溜まっていく一方で、HDの容量確保のためときどき整理が必要で、タイトルだけ見て消したり、ときに少し見てみたり。
『新・美の巨人』6月22日放送分は、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」をとった山本理顕氏が手がけた横浜市立子安小学校が採り上げられていました。
建築のことはよくわからないけれど、見るのはとても面白い。
ここは全校生徒が1000人を超える大きな学校で、それを前提とした機能的な建築のようでした。
体育館に集合というと、全校生徒はわずか10分ほどで体育館に集まる事ができる由、これはL字型をした校舎に抱かれるように体育館があり、二方向から最短距離で体育館と繋がれているためだとか。
学校の体育館といえばステージがあり、ステージにはピアノがあるのがごく当たり前。
この時も舞台の下手のほうにカバーのかかったグランドピアノらしきものがあって、それは小さく画面の端に数秒しか映らないのに、悲しい習性でついチェックをしてしまいます。
一般的に日本の公立の小学校ならばヤマハかカワイ以外はあり得ないという先入観があり、ほとんど関心は寄せていなかったところ、足の形状に「ん?」と目が行きました。
足の下部には金色の薄い受け皿のようなものが嵌めこまれており、そのすぐ下がキャスター。
これはヤマハでもカワイでもないし、強いて言うならベヒシュタインとベーゼンドルファーですが、足の形状はあきらかにベーゼンとは違うし、ベヒシュタインならペダルから斜めに伸びるペダルの突かい棒が太い木製ですが、それは細い金属製のようで、そこからこれしかないと考えられたのは「ディアパソン」でした。
全体のサイズはほぼ210cmクラスで、おそらくDR500だろうと思いました。
このサイズの大橋デザインモデルが廃盤になったあとに出た、カワイのRX-6ベースに一本張りにされたモデルで、高音側の外板のカーブが始まる位置がかなり後方であることからも、そのように推察できました。
実はこれ、個人的にものすごく好きなピアノで、根っからのファンにしてみれば「カワイを流用したもので、真のディアパソンではない!」ということになるかもしれません。
ところが、大橋モデルとは違った包容力とまろやかで美しい音色、大人っぽい落ち着きを兼ね備えた、きわめて魅力的なピアノで、もしかしたら個人的には一番好きなディアパソンかもしれません。
しかしこのサイズともなると、そうそう売れるものではなかったのか、早い時期にカタログから落とされた経緯のある、かなりレアなピアノだと思います。
何年も前、ディアパソンをイチオシ!するショップで、「実は一台だけ本社に残っている未使用のDR500があって、ご希望なら販売可能です。」といわれて、かなり心がざわついたことがありますが、さすがに衝動買いするわけにもいかず諦めるしかありませんでした。
ピアノが手に持てるほどのサイズで、お値段も一桁違えば買っていたでしょうけど…。
そんなレアなピアノが、まさか公立の小学校にある!というのも、かなりレアケースだと思いました。
番組で紹介された建築も大変なものだったけれど、思いがけなくピアノのほうに気持ちが向いてしまい、どういう経緯でそういうことになったのか、あれこれ考えを巡らせてしまいました。
勝手にディアパソンのDR500だと決めてかかって書いていますが、もし間違っていたらとんだ赤っ恥ですが!