危険

ピアノの話でも音楽のことでもないのですが…ちょっとした恐怖体験をしたので。

私は肌があまり強くないこともあり、ここ数年は入浴時にはオリーブオイルから抽出したという、輸入物で不格好な茶色の石鹸を使っています。
といっても高価なものではなく、この手のものの中では安物の部類で、普通の石鹸よりはわずかに値がはるといった程度のものです。

おかげで肌荒れなどはせずに済んでいるものの、普通の石鹸のように使いやすく面取りなどされていないので、そのぶん使いやすい形にこなれてくるまでが大変で、どうかすると小さくなったもののほうが使いやすいのですが、じきに角が取れてくるとやがて小さい方は出番がなくなります。
しかし捨ててしまうのはどうにも気が進まないし、さりとて大きい方にくっつけようにも平面ではないため、これがまたなかなか思うようになりません。

なにか良い方法はないかとYouTubeを見てみると、「この手の石鹸は大きいので電子レンジで温めて使いやすい大きさにカットできますよ」とか「同時に小さくなった石鹸も容易に接着できます」というのがあったので、「ああ、なるほど!」とひとり合点して、動画をよく見ぬまま小さくなった石鹸を、小皿に乗せてチンすべく、すんなりスイッチを押してしまいました。

その間、キッチンで他事にかまけていると、電子レンジの方から唐突に「ボンッ!!!」という大きな音がしてびっくり仰天。
あわてて駆け寄ると、中はまったく見えないまでに白い煙で充満しており、しかもレンジはまだ作動中なので、恐怖におののきながら必死にスイッチをOFFにし、すぐまたそこから離れました。

なにかしくじってしまったらしいことは明らかで、レンジのドアを開けるのも恐ろしくて躊躇われましたが、だからといってとてもこのままというわけにもいかず、ゴクンと唾を飲み込むようにしておずおずとドアを開けると、凄まじい量の白い煙と鼻を突くような異臭が猛然とこちらへ襲いかかってきました。

キッチンは警報機が作動するのでは?と思うほど容赦なく煙が流れだし、しばらくは近辺の視界が効かないほどで、臭いもかなりのもの、とりあえず最寄りの窓を開けながら、これはえらいことになったという認識が遅れて付いてくるようでした。

意を決してようやく中を覗くと、皿は見事に三つに割れていて、中に置いたはずの小さな石鹸はまるで姿を消しており、代わりにコールタールのようなどぎつい茶色の液体がだらしなくそこらに広がっていました。
割れた皿を取り出そうとすると、これがまた信じられないほどの高温に熱されており、回収作業にはかなりの手間を要することに。

考えてみれば、石鹸は油からできているわけだから、ひとえに自分の短慮を恥じるばかりですが、容易にYouTubeの主張を短絡的に捉え、鵜呑みにしたことにも非があります。

幸い怪我などはありませんでしたが、下手をすれば大事にもなりかねないことで、危ないところでした。
というわけで、馬鹿なことをしたおかげでかなりな危険を感じましたので、私の阿呆さ加減をどうぞお笑いください。