楽器解体新書2

前回書き切れなかった、もうひとつ。

それはピアノのハンマーの材質を、本来のフェルト以外のものを代用して使ってみたら、さてどんな音になるのかという実験です。

まず(1)通常のフェルト、次に(2)発砲ウレタン、なんと(3)段ボール、笑ってしまった(4)消しゴム、そして(5)革、そしてなぜか(6)紙粘土という素材が使われ、それぞれがきれいにハンマーのかたちに成形されて、ちゃんとシャンクの端に取りつけられ、アクション機構を介して打弦されるというものです。

この6種類がそれぞれクリックひとつで音を聞くことが出来るようになっていて、その下には解説も付記されています。

発砲ウレタンは、フェルトよりも軽い素材とありますが、そのぶんアタックの力がなく、覇気のない弱々しい音しかしません。
段ボールも質量が足りないのか、頼りない音で、表面が硬いためかやわらかさとはまったく逆のピチピチという硬質な音がするだけ。
消しゴムは、コメントに「重さがあるので期待しましたが、予想外に小さな音」とある通り、ショボイ音しかしません。きっと弾力がありすぎて、打弦したときに消しゴムが弦に食い込んで、弦の振動を阻害してしまっているのだろうと思います。
一番良かったのは、「細かく切って何層にも巻いた」という革で、これがダントツによかったと思います。コメントでは「適度な弾力があって、性質がフェルトに近いのかも…」とありました。
紙粘土は、重くて硬いので、チャンチャンした音でピアノの音とはいえません。コメントでは「大正琴のよう」とありました。さらには重さが災いして連打性にも劣るということでした。

人によってはばかばかしいと思われるかもしれませんが、マロニエ君は実に楽しい実験だと感じます。またフェルトがいかに適切な素材であることがひしひしと感じられ、手間ひまをかけてこういうことをしてみせる技術者さんは好きだなあと思ってしまいます。

上記の結果からすると、新しい素材でも、革のような適度な固さをもつものと組み合わせるなどして追求を重ねると、これは存外いいハンマーが出来るのでは?という思いに駆られてしまいました。

こういう新素材による開発が進んで、もしも新しい発見が得られるとしたら、フェルト以外のハンマーをもつピアノができないとも限りません。

もちろんフェルトを凌ぐものが簡単に出来るとは思いませんが、技術者、開発者が新しいことへ挑戦するという姿勢はどんな分野でも大切なことです。

良くできた別素材のハンマーを使ったピアノの音、さらにはそれによる演奏なども聴いてみたいし、なんだかとても楽しそうな気もします。
どうせ、ボディはじめあちこちが人工素材が多用されている現代のアコースティックピアノなんですから、いっそ開き直って、新素材ばかりで新時代のピアノも作ってみてはどうでしょう。

今どきはペットボトルの素材で作った服とか、なんでもありなのですから、これも一興というものかもしれませんし、少なくとも電子ピアノよりは夢がある気がするのですが…。