先日、久しぶりにヤマハに行くと、書籍売場の配置が変わっており、グランドピアノのすぐ傍まで音楽書が並ぶようになっていました。
C6Xの置かれたすぐ脇の棚を見ていると、ふとピアノの低音側の足の側面になにか金色の文字が書かれていることに気付きました。
何だろうと近づいて見ると、小さめの金文字で「Made in Japan」とありました。
ヤマハピアノは、云われなくても日本製だと思うのが普通で、だれもが日本の楽器の聖地である浜松およびその周辺で製造されているものと長らく思い込んでいたものです。
さて、いつごろからだったか、中国製などのピアノが尤もらしいヨーロッパ風のブランドを名乗って安価に販売され、営業マンの強引な口車に乗せられてこれを買ってしまい、あとから大後悔というような話もずいぶんありました。
その後は、やっぱり日本製のピアノが安心という認識が広がってきたものの、今度はその日本製の出自が怪しくなってきたということなのか…。
人件費など製造コストの問題から、近年は日本の大手メーカーのピアノまでも、一部はアジアに生産拠点を移すなどして、いわゆる日本製ではない日本ブランドのピアノが逆輸入されるようになっているそうですが、なかなかそんな裏事情まで詳しくはわからないものです。
本来、製造物には生産国表示が義務づけられていますが、ピアノは素材が輸入品であったりするためか、必ずしもこれがわかりやすく明示されているとは言い難い状況が続いています。
エセックスやウエンドル&ラングなども、中国製のピアノですが、そのことを隠してはいないにしても、正面切って明示されているとも思えません。少なくとも、その点についてはそう積極的には触れないでおきたいという売り手側の本音を感じてしまいます。
尤も、中国製を言いたくないのは、なにもピアノに限ったことでもありませんが。
ヤマハなども一部のアップライトなどはアジア工場製だったりすることが次第に知られるようになりましたが、そうなると全製品が疑いの目をもってみられることにもなるのかもしれません。
また、日本製であっても、内部のパーツやアッセンブリーは輸入品である場合も少なくないわけで、これはヨーロッパ製ピアノにも同様のことが云えるようです。要は世界中のピアノが世界中のパーツを使って作られているということでもあり、こうなると純粋に○○製と言い切ることはどのピアノに於いても難しくなっているようです。
そう厳密な話でなくても、主にどこで製造されているかという点では、日本の大手のグランドは日本製のようで、そこのところを明確にするためにも上記のような「Made in Japan」の文字がピアノ本体に明記されるようになったのだろうと思われます。
これはこれで、日本製ということがはっきりするのかもしれませんが、裏を返せば日本製じゃないヤマハピアノがありますよとメーカーが認めているようにも感じられました。
ともかくそんな時代になったということでしょう。
ちなみに、過日書いた「黒檀調天然木」の黒鍵は、新品のC6XやC5Xで見る限り、一時のような安物チックな代物ではなく、とても立派で、一見したところでは黒檀と見紛うばかりの仕上がりになっており、この点は驚きとともに認識をあらためなくてはと思いました。
ただし、先々の経年変化でどうなるのかまではわかりませんが…。