以前にも少し触れましたが、最近の普及品ハンマーには、意図的にかなりの固さに仕上げられているものがあるようです。
これまで長らくマロニエ君の抱いてきた認識では、新しいハンマーはフェルトが柔軟で、弦溝も付いていないため、どうしてもはじめは音に芯がなく、鳴りもイマイチという期間を耐えてて過ごさねばならないというものでした。
そのため仕上げの整音では、弦の当たる部分にコテをあてるとか、適宜硬化剤などを用いるなどして、できるだけ明晰な音に近づけるよう、まずは技術者が尽力する。それが及ばない部分については、しばらく弾き込んでいくことで、徐々に本来の鳴りにもっていくという流れで、要はある程度の時が必要なものだと思っていたのです。
ところが最近のハンマーの中には、新品でもカッチカチの、はじめから硬質な音を出すものがあることは知りませんでした。よほど巻きが固いのかと思いきや、そうではないらしく、質の良くないフェルトを固形物のように固めてしまっているようです。
これじゃあ技術者の整音も高度な意味でのそれではなくなり、ただ硬い肉を突いたり叩いたりして柔らかくするような作業になるような気がしてしまいます…。
使い古したハンマーが、整音してもすぐにペチャッとした耳障りな音に戻ってしまうように、フェルトそのものに本来あるべきしなやかさがないとすれば、音質はもちろん賞味期限もたかがしれているでしょう。深みのある音などは望むほうが無理というべきですが、作る側も、使う側も、それをじゅうぶん承知の上なのかもしれません。
取りつけるピアノの品質もそこそこなのにもってきて、いきなり派手な音が出るし、価格も安い、×年ぐらい保てばいいとなれば、それで良しということなのか。
ピアノメーカーにしてみればそこそこの時期で買い換えてもらうためにも、ひょっとすると最近はこういうハンマーのほうがある意味主流なのかもしれません。
考えてみれば、新品ピアノでも、昔のようにモコモコ音しか出ないものは最近はまずお目にかかりません。自動打鍵機のような機械のお陰かとも思っていましたが、どうやらそればかりではないのでしょう。
新しいうちから、いかにも滑舌の良さげな明るくパリッとした音がいとも安易に出るのは、こういうハンマーで鳴らしているということなのか…。尤もハンマーに限らず、ボディや響板などもほぼ似たような品質で全体のバランスがとれているとすれば、別の意味ですごく良くできているということでもあり、そのあたりの技術力というのは大変なものなのかもしれません。
さらに、お客さんは弾いてみたときの、短時間で受ける印象が購入への重要な決め手になるでしょうから、売る側にしてみれば1年ガマンして弾いてくださいなどという悠長なことは云っていられないんでしょうね。
また天然資源は軒並み品薄で量産には適さず、価格も高値安定となれば、昔だったら検査ではねられて使わなかったようなものでも、今は加工して徹底的に使うのが常識なのだと思われます。ということは、響板はじめあらゆる部位も、およそ似たようなレベルだと考えていいのかもしれません。
大概のことなら廃物利用は美徳かもしれませんが、楽器作りもそれがあてはまるのかどうか…マロニエ君にはなんとも云えません。