予報と結果

今年も台風の季節となっています。

とりわけ沖縄や九州は、多くがその最前線に立たされる地勢的な運命にあり、やっと夏の暑さから解放されると思うのも束の間、お次は台風の到来を覚悟しなくてはなりません。

むかしから春の陽気が体調に合わないマロニエ君にしてみれば、春→梅雨→夏→台風と一年のほぼ半分が過ごしにくい時期となるわけで、考えてみればうんざりの時期も長いはずです。

むかし毎年のようにメキシコへ旅する知人がいましたが、彼の地は「常春」すなわち年中春なのだそうで、蒸せるような夏の暑さも、肺と血管が収縮するような冬の寒さもない、温良な季節ばかりが年がら年中続くのだそうです。
なんと羨ましいことかと思ったのですが、どうやら現地の人はそれほどでもないのだそうで、あちらから見れば(とくにメキシコ在住の日本人によると)、日本のように四季の移り変わりがあることにある種の憧れみたいなものもあるらしいという話を聞いてとても意外だったことを思い出します。

年中過ごしやすい春というのは、差しあたってはいいのでしょうが、その反面変化に乏しく、そこに住み暮らす人々もどことなく怠惰で、いつも平坦で刺激もなく、これが必ずしも人間の暮らしにとって最良とは言い切れないということを聞いたとき、そんなものかなぁ…と思ったものです。

そうはいっても、日本の四季も、言葉だけは美しくて叙情的な響きがありますが、実際にはけっこう苛酷だなぁ…とも思います。天候だけでいうなら、日本は必ずしも住みやすい地域とは云えないような気がするのですが、かといって世界を知らないマロニエ君には本当のところはよくわかりませんが。

さて、冒頭の台風に戻ると、今年は梅雨の延長のようだった夏から、季節外れの台風の情報に翻弄されたように思います。
今月も18号に続いて19号が北上、九州付近から右折して、列島を嫌がらせのように横断していくというパターンが二週続き、土日や連休は台風一色で終わってしまいました。

自然現象はどうすることもできないとしても、これに際しての気象庁の発表する台風情報、あるいはテレビが報道する台風の情報には、個人的にはいささか疑念をもつようになりました。

早い話が、いくらなんでも大げさに言い過ぎる傾向が以前よりも強くなり、毎回どれほどの巨大台風がやってくるのかと、過ぎ去るまでの数日間は右往左往させられるのですが、実際はほとんど予報や報道とはかけ離れた平穏な状態です(少なくとも九州は)。

もちろん用心に越したことはないし、結果的に大事に至らなかったのはなにより結構なことではあるけれども、あまりにそれが毎回で、さすがにどういうことなのか?と思ってしまいます。

夏の台風でも「かつて経験したことがない規模の猛烈な」というフレーズが何度も繰り返され、それは福岡地方も完全に含まれており、学校の類はすべて休校、街はすべてが台風にそなえた形となりましたが、実際は台風どころか、むしろ無風といってもいい状態のままそれは通過していきました。

先週もやや強めの風が少し木の枝を揺らしていた程度ですし、さらにそれよりも北にコースをとった19号も、いつどうなったのかほとんどわからないまま東へ進んでいき、あとから多少の風雨となった程度でした。
宮崎・鹿児島が最も危険な進路上にありましたが、宮崎市内に実家のある友人が電話をしてみたところ、「なにもなかった」とのことで、これほど甚だしく予報と実際の食い違いがあるというのはちょっと問題ではないだろうかと思います。

気象観測の技術も昔にくらべれば格段の進歩を遂げているはずですが、もう少し、リアリティのある予報であってほしいものだと思います。

もちろん防衛費などに代表されるように、社会の安全や、人々の健康というものは、ほんらい何もなくて当たり前、その当たり前を実現し維持ためには多大なコストやエネルギーを要するのはわかりますが、それにしてもこのところの台風情報はどこかおかしいのでは?と思えてなりません。