続・それぞれの道

長い歴史の中で、職人や物作りの最前線で圧倒的に男性が多いのは、たしかに昔の男社会的な悪しき感性を引きずっている面もあると思いますが、現実問題として仕事のクオリティなどが男性向きであったことも要因のひとつであったと思います。

男性の仕事が正確で美しいのは、べつに男のほうが能力があるからとは思いません。
もてる能力の総量においては、男女でこれといった差はないというのが一般的な認識ですし、そこはマロニエ君もまったく同様の考えです。要は、その能力の用い方、運用の手順や方法が男女ではかなり違うのだろうと思います。

男はなんにつけてもあれこれの気を遣いますし、前後左右に注意の意識が働きますが、これは悪くいうなら臆病で心配性ということもできるかと思います。

それはまさに一長一短で、指導者とか人の上に立つリーダー的なものには、そういった周囲に気が回りバランスをとろうとする性質は良い場合に働くことも少なくありません。
仲間意識というものもこれに類するものでしょうが、時として互いをかばい合ったり、悪しき慣習の是正や改革ができないのも男性の方が強いと言えるようにも感じます。

いっぽう、マロニエ君が個人的に感じているところでは、医師などは意外にも女性は好ましい性質を発揮する職業ではないかということです。
個人的な経験が中心になりますが、これまでの人生の中で自分が医師の診察を受けたことがあるのはもちろん、身内や家族が入院というような状況にも何度か直面しましたが、そのいずれの面でも女性医師の素晴らしさというものが強く印象に残っています。

いろいろ理由はありますが、まず女性医師には変な欲があまりない(もしくは平均して男より少ない)ということがあるのか、医師として目の前の患者に対して必要なことはなにかを、真摯に考えてくれると感じるのは多くが女性医師でした。
もちろん男性がそうではないというわけではないのですが、男性医師はどちらかというと自分本位で、患者の状況説明などを注意深く耳を傾けることより、専ら自分の知識や経験、それに基づく判断や能力が優先されます。

家族が入院などした場合に於いても、女性医師は思いのほか責任意識が強く(と感じる)、労を厭わずに必要なことを地道にやろうという意志が読み取れます。
必要に応じて説明はきちんとしてくれるものの、その説明が簡潔で過不足なく、よけいなことは省略され、必要以上に患者の家族にもストレスをかけないのも女性医師だったと思います。

では男性医師はどうかというと、ひとことでいうといちいち自慢の要素があり、必要な説明と、不必要な説明の選り分けがなされていません。徒に専門性を帯びた言葉や論理、仮定の話などを延々と繰り返し、それを聞かせたがるのが男性医師という印象です。
今どきということもあって表向きの語り口はいちおうソフトだけれども、どこかに支配的/権力的な響きが混ざっているのも決まって男性医師です。

なにかで読んだことがありますが、男というものは三度のメシより自慢が好きなのだそうで、それを何らかのかたちで出さないでは生きていけない生き物のようです。
優秀だなあと思うことがある反面、男のこういう部分は、根本が幼稚だとも思うわけです。

そしてその自慢に対する押さえがたい欲求が、切磋琢磨のモチベーションになっているという一面はまちがいなくあると思います。

それでも最近では男女の特性にも多少の異変があって、従来は男の牙城のように思われた分野に、ぞくぞくと気鋭の女性が頭角をあらわしているようですから、はてさてこの先はどうなっていくのだろうと思います。