シトロエンという一台のフランス車を20年近く乗り続けていることは、折りに触れこのブログにも書いていますが、何より大変なのはメンテナンスに関する部分です。
これといって人気車種ではないため、当然ドイツ車のようは販売台数は見込めず、輸入元はいつもやる気がなく、ディーラーはころころ変わります。国内のパーツのストックなど無いに等しいのはいつものことで、さらにはメンテを受けてくれるサービス工場というか、いわゆる主治医を確保するだけでもオーナー諸氏はいつも苦労をさせられています。
ここ10年ほどの主治医は、看板さえあげていない個人の整備工場で、有名な輸入車店の工場長をされていた方が独立してやっているところですが、ここには普通の工場は診てくれそうにない珍車・稀少車が年中あふれています。
その主人というのが大変な変わり者で、よくいえばマイペース、その上に一人でやっているものだから、その仕事ぶりはますます不規則で、約束などはほとんど役にたちません。さらには仕事が立て込むと電話にも出なくなり、それが延々何日間も続くなど、そのお付き合いの流儀は一通りではありません。
故障で困っていようが、車を預けて約束の日を過ぎていようが、ひとたび音信不通状態に入るとこれが一週間でも十日でも続きます。友人の中には、遅々として進まぬ作業のため、ついには半年間も車を預けるハメになったりと、およそ常識では考えられない世界で、さすがに最近では少し客離れが起きているような気配です。
マロニエ君もひとえに愛車のため、ここに出入りし、ひたすら忍耐を続けました。
ところが最近になって、以前この車のディーラー(今は存在しない)でメカニックをやっていた人が紆余曲折の末、福岡市内のBMWのディーラーに勤められることになったらしく、驚いたことにはシトロエンも受け付けるという情報を仲間内から得たので、二三修理を抱えていたことでもあり連絡を取ってみました。
果たして快く受け入れてくれることになり、さっそく車を持ち込み、二週間ほど預けてつい先日引き取ってきたところです。
くだんのマイペースおやじのファクトリーに比べれば、距離もグッと近くなり、電話には必ず出る(ディーラーなので当たり前ですが)、しかも腕も良いのですっかり気が嬉しくなりました。
それだけ状況は好転したのだから十分ではありますが、気になる点も少しありました。
ひとくちにBMWのディーラーといっても市内にはずいぶんあちこちにあって、しかもそれぞれ母体となる親会社が違っていたりと、どこがどうなっているのやらさっぱりわかりません。
今回の店舗・工場は比較的最近オープンしたところですが、敷地内に入って車を止めようとするや、ショールームの中から若い女性が二人と男性一人、計三人もが脱兎のごとく飛び出してきて、寒風吹きすさぶ中を車外で待機して御用伺いをします。ドアを開けるなり、来意とメカニック氏の名を告げましたが、こういうことをあまり過剰にやられるのは却って快適とはいえないものがあります。
修理が終わり車を受け取りにいったときも同様で、手厚いお出迎えとともにショールームの一隅に案内され、希望するドリンクをもってきてくれるなど、ありがたいことではありますが、そのいっぽうで、たかだか修理明細を作るのに延々と長時間待たされるのはどうかと思いました。
ついにしびれを切らし、今日のところは支払いだけ済ませて明細は後日送ってもらうことになりましたが、今度は領収書を出すのにも再び待たされます。
上質な「おもてなし」のかたちをとるのは結構だけれども、何時ごろ行くというのはあらかじめ伝えた上でのことなので、こういう肝心なことはもう少し迅速に願いたいところです。
たしかに車(とくに輸入車)の顧客の中には、ディーラーで受ける接待がよほど心地いいのか、これをひとつの楽しみにして、なにかというと店に出入りしているような人も少なくないようなので、店側も迅速に事務処理をするという必要性がないのかもしれませんが、マロニエ君のようにその手のことに興味がない側にしてみれば、いささか鬱陶しいのも事実です。
快適というのは形ではなく、精神の領域にあるものだということをあらためて思いました。