すでに何度も書いたことですが、マロニエ君は日毎に空気が蒸して膨張してくるような春の到来が苦手で、今年もついにこの季節をむかえなくてはならない今がうんざりなのです。
春は喜びの代名詞のようで、概念としても良いことのように云われますが、現実的には本当にそうなのだろうかと思います。
マロニエ君に限らず、この季節を苦手とする人は知るかぎりでは結構多くいて、冬に馴染んだ身体は大気に温められて違和感を覚え、体調管理にもとくに気を遣います。春がいやだなんて現代病のひとつのようでもありますが、むかしのように花が咲いて蝶が舞う季節として無邪気に喜ぶことができない自分が自然に背いているようでもあります。
そうはいっても、世の中が活動的になる季節であることは否定しがたく、とりわけ先週土曜はそれを痛感させられました。車の感じを確かめる目的があって、午後四時頃だったと思いますが漫然と車で街中に出てみると、道がどこも混雑していてなかなかスムーズに走ることができません。
幹線道路は縦も横も車がひしめき合っており、これを避けようと都市高速に入りました。
福岡は都市高速の環状線があり、これを一周するのは結構な距離があるので、適当に走って適当なランプを出ればいいぐらいに軽く考えていましたが、ETCをくぐって本線に出てみると、意外やこちらも想像以上の交通量であることに少し驚きました。
しかし都心部を離れるにしたがって次第に道は空いてきたので、そのまま順調に(深く考えることもなしに)走っていると、突如として渋滞の最後尾が目前に迫り、電光掲示板にはこの先が「渋滞」であることを告げています。
「うわ、これはたまらない!」とばかりに最寄りのランプを出たのですが、果たして下の道はさらに大変な渋滞で、それでもまだ事の次第が呑み込めないマロニエ君はいったい何事かと思いました。
目の前にはヤフオクドームがあり、それを見て、どうやら野球の試合がはねたところに運悪くハマってしまったことに気づきましたが、とき既に遅しで、すべての方向が大渋滞となっていました。
野球観戦にいったいどれぐらいの人たちが訪れるのか一向に知りませんが、少々のコンサートなどとはケタが違うぐらいのことはわかります。野球に関心のないマロニエ君にしてみればまったく予想もできなかったことですが、この状況ではドームから流れ出た人たちの大波が過ぎ去るまでは、為す術のないことは察知できました。
諦めて渋滞の中でじっと耐えますが、それでも大変な渋滞で、もともと渋滞気味の街中の道路を避けて入ったはずであった都市高速環状線でしたが、まわりまわって最もハードな渋滞エリアへと落とし込まれることになろうとはまったく想像もしていなかったことでした。
どうにか渋滞の外に出たのは、それからどれくらい経ったころだったか正確な時間は覚えていませんが、かなりの長時間止まっては進みを繰り返したことは間違いなく、自宅に帰り着いた時には疲れでフラフラになってしまっていて、ついにその日は完全に回復できないまま終わりとなりました。
わざわざ外に出て、時間とエネルギーを使って、ガソリンをまき散らし、あげくに疲れて帰ってきただけでした。
これを読まれた方は、たかが渋滞ごときでなにを言ってる!と呆れられそうで、まあそれは確かにその通りなのですが、その要素のひとつとして春に入りかけの季節であったことも折悪しく重なってのことだったと思います。
春はなにかにつけて幕開けの季節ではあるのでしょうが、春霞という言葉があるように空気は決して清澄ではなく、まして花粉症だのPM2.5だのと良からぬ環境に身をさらすなど、これが苦手な身には甚だ厳しい季節ですから、どうしても警戒心のほうが先に立ってしまいます。
すでにあちこちでお花見もはじまっていて、やれやれという気分にしかなれないマロニエ君は、やはりよほど偏屈なんだろうなあと我が身を恥じ入る季節でもあえるのですが、いくら恥じ入ってもこれは生涯変わることはないでしょう。
春先に比べたら、猛暑でも真冬でも、よほど過ごしやすいと今年も思ってしまうマロニエ君でした。