今どきの中古車店

このところ、輸入車専門の中古車店へ2軒ほど行く機会(購入ではなく)があったのですが、昔とはずいぶん様子が違っており、それぞれの店では車種や得意分野を絞り込み、厳格な商品構成がされている点が非常に印象的でした。
中古車店の在り方もまさに時代とともに変化しており、今昔の感に堪えませんでした。

ひとつ目の店は、すべての車が比較的高年式で、走行距離はすべて15000km以内のものに限られていることにまずびっくり。当然どの車もとてもきれいで、中古車というものにありがちな古さや使用感など、いわゆる人の手垢のついたネガティブなイメージというのがほとんどありませんでした。
さらには車種も人気のあるメーカー/モデルに絞られ、確実に売れるであろうものだけしか在庫もしないという徹底ぶりが窺われました。輸入車といっても珍車/希少車の類は見当たりません。

聞くところでは、ドイツの高級車でも、大型車の部類、あるいはエンジンが大排気量のモデルなどは、端から取り扱いをしないというあたりにも、今どきの購入者のニーズがはっきり見えるようで、その割り切りには時代の厳しさがにじみ出ているようで、思わず圧倒されるようでした。

つまりどんなにいい車でも、走行距離の多い車、大型車、大排気量の車は売れにくい=商売にならないということらしく、店頭に並ぶことはもちろん、仕入れることもないのだそうです。
もちろんごく一部の例外的な人気モデルなどでは少し条件が外れることもあるようですが、全体としては、おおよそ輸入車中古店の基本的な営業スタンスはこういう方向を向いているようでした。

昔の車好きは、その車に惚れ込んだらかなり情熱的かつ盲目的で、分不相応な車だろうとなんだろうと、買えるものなら必死になって購入して単純に悦に入っていたものですが、今の人達は車は好きでも基本が冷静で、実用性を重視し、駐車場の問題、周りの目、ランニングコスト、故障した場合の修理代などのリスクをトータルに考えて、いわゆる無謀な車選びはしないというのが主流のようです。

聞くところでは、たとえばメルセデス・ベンツでいうと大型車であるSクラス、もしくは3200cc以上の車は、それ以下のモデルに比べて売れ足が一気に鈍るのだそうで、今どきはあまり人気がないのだそうです。
だからそのあたりのモデルは、お客さんからリクエストがあるような場合以外は仕入れないし、むろん在庫はしない方針だと店長さんがキッパリ言い切ったのがきわめて印象的でした。

もうひとつの店は、ドイツ、フランス、イタリアの車をずらりと並べていましたが、価格はおしなべて100万円台、それもほとんどが150万円以下というものでした。
上記の店よりは多少走行距離も嵩んではいるものの、それでもせいぜい3~4万キロ止まりという感じで、どれもシャンとしていて決してくたびれた感じではありません。

こちらもやはり自店の売れ筋という基準を設けて、それにそった車のみを置いていることが一目瞭然でした。

昔は、輸入車を取り扱う中古車店というのは、一部の専門店を別にすれば、多くは何でも屋のような状況で、いろんな車が並んでいたものです。手頃なものから高級車/高級スポーツカーまで、なんでもありでしたし、とりわけ高額車はお店の看板商品でもあり、常にぐっと前面に出されていた感がありますが、それが現在ではすっかり様変わりして、安くて手頃なモデルなどに特化し、気軽なオシャレ感や現実性をアピールするという方向に変わってきていることを痛感しました。

さらには昔の感覚でいうと、全般にかなり安めの価格になっているようで、それだけ輸入車が売りにくい時代になっていることを物語っているようでした。
輸入車が贅沢品で、それでもどんどん売れていた時代は遠い昔の話です。加えてネット社会の到来で、個人が全国の中古車情報を網羅的にチェックすることも可能となり、競争は格段に厳しいものになっていったんだろうと推察されます。

おそらく世界的にも、ドイツをはじめとするヨーロッパ製の高級車の中古は、質・価格ともに日本が最も有利な買い物ができるという説もあるほどです。2つ目の店ではひと世代前のBMWの3シリーズで、かなり程度の良いものが5台並んでいましたが、ほとんどが150万円以下でした。これって軽の新車と同じ価格帯でもあり、思わずウーンと唸ってしまいました。

逆にいうと、日本車の軽やコンパクトカーって、相対的に結構高いんだなぁとも思った次第です。