手頃価格でゲット

中古車店のことを書いたついでにもう少々。

マロニエ君の勝手な思い込みかもしれませんが、長引く不景気故か、価値観の変化か、ピアノや輸入車のような付加価値品目の中古価格は、昔に比べると安くなっているような気がしてなりません。

売る側にしてみれば贅沢品に類する品目の中古品は、時代のニーズからちょっと外れて売りにくいのか、かなり良いものが安く売られているようで、かなりお買い得感を感じます。

その一例がアップライトピアノで、タダ同然のオンボロは別として、お店でまともなものを買うとしても、うるさいことを言わなければ、20万円ぐらいでもきちんと整備されたピカピカの良い物が買えるのは驚くべきことです。
現在の主流である電子ピアノに比べても、こちらはなにしろ本物のアコースティック・ピアノであり、それもヤマハやカワイのようなれっきとしたブランド品が買えるのですから、これは市場自体がかなりのバーゲン状態ではないかと思います。

電子ピアノというのは近隣の騒音問題をクリアできるということ以外にあまり見るべきものがないし、はっきり言ってしまえばあれは楽器ではなく電気製品と心得るべきでしょう。聞くところでは、それなりの時期に、それなりの故障やトラブルが出てくるのだそうで、その際、高い修理代を出してまで使い続けることはほとんどないのだとか。

電気製品となれば、テレビや洗濯機のように新しいものへ買い替えが必要で、古いものは粗大ゴミとして処分することなどを考えれば、やっぱり生ピアノというのは価値や存在感からして違います。
上記のような中古であっても本物のピアノは寿命は遥かに長く、その気になれば何十年も使えるものがほとんどです。モノとしての価値はおよそ勝負にならないと思うのですが、それでも生ピアノというのはなかなか買う人がいないのは何故なんでしょう。

話が脱線しかかりましたが、マロニエ君の少ない知識と印象でいうと、日本はこの種の中古品に関しては、突出して恵まれた国だと思います。
大ざっぱに云っても諸外国では中古品の価値というものは、日本人が考えているよりはるかに高く、それだけ価格もずっと割高だという印象があります。その点、日本は中古というと何かやましいもののようなイメージがつきまとい、あくまで新品がエラくて無条件に好まれるというメンタリティの土壌があるのでしょう。

また、全般的にものを長く使うということがあまりなく、どんなにきれいでも要らなくなれば直ちに処分するとか、一定期間が過ぎると買い替えの対象になることが少なくありません。ともかく新品もしくは新しいものが大好きで幅を利かせる日本では、非常に状態の良い中古品の宝庫であもあるわけで、しかもそれらは一様に「中古」ということで値打ちがずいぶん下がるので、ジャンルによってはそこに目をつけている外国人も少なくないようです。

例えば車の場合、最近目にした専門誌の記述によれば、ドイツでは中古車の走行距離が10万キロ程度では、多走行の部類にすら入らないのだそうで、この一点だけでも彼我の違いに口あんぐりでした。
日本なら、中古車で10万キロといえば、ほとんど賞味期限の切れたボロ同然の扱いで、まともな商品価値はないのが普通です。

たしかにドイツのアウトバーンをはじめ、陸続きのヨーロッパでは高速道路網が発達しており、走行距離の数字だけで同じ判断をすべきでないという見方も以前はありました。いっぽう日本の道路は慢性渋滞で、高温多湿の中をノロノロ運転で、距離は伸びていなくても機械的なストレスが大きいなどとまことしやかにいわれたものです。
ところが最近では、エンジンや駆動系に強い負荷をかけて高速道路を飛ばしまくった車こそが最も傷みが激しいということが指摘されるようになりました。

まあ、そりゃあそうでしょう。ヨーロッパでバンバン飛ばしまくって、わずか数年で10万キロ走った車なんて、我々日本人が見たらかなりくたびれた車と感じるでしょうし、そんな車は日本人ならまず嫌がりますね。

というわけで良いものは日本にこそあって、しかもちょっとでも型落ちすればかなり安いみたいです。
実は以前から耳にするところでは、ヨーロッパから、ちょっと古い中古のドイツ車などを探しにわざわざ日本へやって来るらしいという話は耳にしていました。そして昨年のこと、マロニエ君の友人(関東在住)が乗らなくなったあるドイツ車を中古車店に預けていたところ、ドイツ人ブローカーがやってきて、見るなり望外の高値で購入、ドイツへ送る手続きを行なったというのですからウワサは事実として裏付けられてしまい、たいそう驚きでした。

やはりそれだけ、日本には外国人から見たら飛びつくような上物の中古品が安値でたくさんあるということなんだろうと思います。日本人の丁寧な扱いや、ちょっとしたキズでも許さないこだわりの民族性、それでいて新しいものが好きとなると、状態の良い中古品をぞくぞくと生み出すための条件が見事にそろっているのかもしれません。

というわけで、品目によっては良いものが手頃価格でゲットできる好機のような気が…。