消極的無礼

何かがヘン…と感じることは、日常のおりおりにあるものです。
それも、とくに大したことではないことが、却って神経に障ったりするのは人の心の不思議というべきかもしれません。

先日、主に運転用の新しいメガネを作ったときに、運悪くそんなシーンに遭遇してしまいました。
メガネを作るのはマロニエ君には甚だ苦手なことで、店先で拘束され、検眼に時間とエネルギーを費やすことで、ひじょうに目と神経が疲れてしまって心身ともにヘトヘトになるのです。

近ごろは、おしゃれなメガネが意外な破格値で作ることができるので、マロニエ君もいやなことは一回で済ませてしまおうと、遠く用と近く用の二種類のメガネを新調することに。

検眼をして、フレームを選んで、やや特殊なレンズであるため当日の出来上がりは無理ということで、支払いを済ませ、控えを受け取って、後日受け取りに来ることになりました。
準備ができたら電話の一本でもくれるのかと思いきや「いえ、お電話はいたしません。こちら(控えに書いてある日にち)でご準備できていますので…」というので、普通は電話でもかかってくることで、忘れていても思い出すことも兼ねているように思いますが、ま、いいかと思って帰りました。

何月何日に出来るということは、自分自身で控えをチェックして、認識して、自発的に取りに行かなくてはいけないわけで、なんとなく気を張ってなくちゃいけない印象があったことは事実ですが、安いということはそういうことでもあるのだろうと思うことに。

それから数日して取りに行くと、よほどシステマティックにできているのかという予想に反し、ずいぶん待たされ(先客がいたわけでもなく)、そのあげくようやく出されたメガネは、2種類のフレームとレンズがそれぞれ逆になっているという大ミスが発覚。こういうとき、今の若い店員さんにとって、接客マニュアルにない「番外編」に突入するのか、とりあえず石のように固まって無言となり、しきりに書類ばかりチェックしまくります。
同僚と小声でしゃべったりと、多少あわてているふうではあるけれど、要するにこっちは完全に放置された状態となり、それが延々と続きます。ずいぶん経って、ついにミスであることの確認が取れたらしく、再度レンズの発注をかけるということになり、このころになってようやく「申し訳ありません。」という言葉が出てきますが、ちょっと遅いようですね。

でも、これは単なるミスだと思いえば、お互いに生身の人間なんですから仕方がないかとも思えます。
その際の対応のマズさも、予期せぬ出来事ゆえと、まあ理解してやれないこともありません。

おかしいと感じるのは、実はこれらのことではなく、はじめにマロニエ君の対応をしてくれて、フレーム選びから検眼まで、1時間近く対応してくれたひとりの若い男性のほうです。出来上がりを受け取りに行ったときには、たまたま一番身近にいた店員さんに控えを渡したことから、その女性がその場合の担当者になるのかなんなのか、そのあたりの内部規定はしるよしもありませんが、数日前にあれだけ接客をし、あれこれ言葉を交わしたにもかかわらず、前回の男性は目の前にいるのにまったくの知らん顔なのは「何なの!?」と思います。

普通なら「こんにちは」か「いらっしゃいませ」ぐらいの最低限の挨拶をするのが当たり前ですが、一瞬目が合っても、これといった反応もせずに、悠然と横にいる店員としゃべてみたりで、なんというか、ちょっと薄気味悪いものを感じてしまいます。

もちろん客と店員の関係なので、実際だれかが応対して事足りていればそれでいいということかもしれませんが、それにしても、こうも露骨にその場限り、前後のつながりなんて完璧にないよという反応をされてしまうと、これはやっぱり無礼ではないかと思います。しょせんはそんなもの、くだらないとは思いながら、やはり胸の内でいやなものが駆け巡ることは事実です。
商売には商売なりのルールというものがあるわけですが、こういう消極的無礼は、今どきの社会には蔓延横行していることをこれまでにも何度か経験させられています。

結局、二度目に取りに行った時も同様で、その男性はこちらを認識しつつなんの挨拶も反応もなしで、マロニエ君もあえて目が合わないように意識していました。こんなことがあると、店全体の評価を甚だしく下げることになり、今後はその店で買う気持ちを完全に失いました。
向こうが一回限りというなら、こちらも一回限りにしてやらぁと思います。