何年か前の事だったと思いますが『暴走老人』というタイトルの本が流行ったことがありました。
マロニエ君は読んだことはありませんが、イメージとして、最近この本のタイトルを連想させるようなことが少くありません。
運転をしていても、まったく身勝手な割り込みや、片側2車線のうちのひとつが工事中で、順次二列の車が交互に合流していくような場面でも、前車に鬼のようにビッタリくっついて絶対に他の車を入れようとしない車などは、見れば大半が熟年〜高齢者の運転する車だったりします。
つい先日もある駐車場でこんなことが。
駐車券をとり、空きスペースを探しながら徐行していると、後ろのクルマが追突せんばかりにくっついて何度もクラクションを鳴らしてくるので恐ろしくなりました。こちらが駐車し終えると、むこうは目の前に車を止めてすごい剣幕で睨んでいます。一体なに?と思ってこちらも見ていると、ついにドアが開き、中から初老の男性が降りてきて「トロトロ走るな!!」といきなり大声で吠えました。
だってここは駐車場、徐行して場所探しをするのが普通だと思うのですが、この方にはそれが許せなかったらしいのです。
テレビでよくやる万引き摘発の様子を見ても、万引き犯じたいも高齢者が多いのに加えて、捕まったときの逆ギレ的な態度がすごいのも、どちらかというとこの世代のほうが多いという印象があります。
またつい最近、とある関東の有名ホールに勤める知人から聞いた話ですが、さる業界のイベントがそのホールで行われたところ、ケータイの電源を切るどころか、暗い客席では無数のスマホがいじられっぱなしで、その光が異様なほど目障りであっただけでなく、なんとあちこちで着信音が鳴り、客席で構わず話をする、長引くと話しながら外に出ていくという驚きの光景だったとのこと。
コンサートではないとはいえ、このような行動を取る大半が、分別もあるはずのいい歳をした人ばかりだったというのですから仰天です。
世間一般でいうと、礼儀や公衆マナーの悪さに憤慨するのはだいたい中高年で、されるのは「若者」とか「新世代」だと相場が決まっていたものですが、どうも最近はそのあたりも怪しくなっているのか、古い世代もかなり荒れ放題のようです。
そして、事と次第によっては若者世代のほうがよほどマシという場合もあるのは、マロニエ君もチラホラ実感しているところ。
若い世代のほうが、何事においても規制の厳しい窮屈な世相で育ってきているためか、いったんルール化されたものには、とりあえず素直に従うという習慣というか体質をもっているのかもしれません。
いっぽう、中年以上の世代の若いころは、今よりももっとダイナミックに生きて来たという下地があるからか、なんでも無抵抗に従順ではないのだろうと思いますが、その悪い面が出てしまっているのかもしれません。
先日も、こんなことがありました。
マロニエ君は10年ほど前の数年間、県内のコンサート情報誌の発行に友人と携わった時期がありました。
掲載は無料、大小すべてのクラシックコンサート情報を網羅したもので、とても好評となり、一時はかなり支持されたときもあったのですが、情報誌というものは凄まじいエネルギーを要するもので、生活の片手間にできることではなく、数年間ふんばってみたもののついに廃刊することになりました。
マロニエ君のケータイ番号はその当時と変わっていないので、しばらくは掲載依頼や問い合わせの電話がよくかかっていましたが、さすがに10年近くも経てば、それもまったくなくなりました。
ところが先日、見知らぬ番号から電話がかかり、いきなりコンサートがどうのこうのという話をはじめられました。
ちょっと聞いた感じは、上品そうな女性の声、丁寧な言葉づかい、コンサートをされる方のご家族なのか、話しぶりと声色でそこそこ年配の方だということはすぐにわかりました。…が、すぐには話の要領を得なかったので、「恐れ入りますが、どちらにおかけですか?」と聞くと「あのぅ…◯☓◯☓◯☓じゃございませんか?」と昔の発行所の名を言われたので、すぐにこちらも理解でき「あれは、もうずいぶん前に廃刊になりました…」というと、ほんの一瞬の空白のあと、いきなりブチッと電話は切られてしまいました。
普通なら「ああ、そうですか」ぐらいの言葉はあって然るべきだと思います。
勝手に電話して、一方的に自分の話をし、廃刊になったと告げられるや、もう用はないとばかりに無言で電話を切るという行為が信じられませんでした。
掲載は無料だったので、要するにタダでコンサートの情報を載せてほしいという目的だけがあっただけで、こちらは電話に出て事情を言っているのに、いやはや、なんとも凄まじいものです。
しかも相手が年配の方であっただけに凄みさえ感じ、思わず寒いものが走りました。
きっと普段は、用のある相手には、あの調子で、いかにも上品におしゃべりしている方なんだろうと思うと、べつに人間がきれいなものとは思っていないけれども、しみじみとイヤになりました。