ルールの死角

つい先日、友人とIKEAに行って、ついでに食事をしていた時のことです。

この日は平日の夜だったので、店内もガラガラでレストランもお客さんは少なめでした。
カートで食べ物を運んで適当にテーブルに座ると、すぐとなりに高校生らしき制服姿の男子生徒が3人で来ていて、テーブルの上には本やノートや筆記用具がこれでもかとばかりに広がっていました。

なんと彼らはそこで試験勉強をやっているらしく、マクドナルドなどの店内で長時間椅子とテーブルを占領して勉強のようなことをやっているのはしばしば目にしていましたが、それがついにはIKEAのレストランにまで進出してきたのかと思いました。

見たところ、食べ物はなにひとつ無く、ドリンクバー(たぶん120円)のためのカップとグラスがあるばかり。
とりあえず勉強という目的があるためか、それほどおしゃべりはしませんが、3人が代るがわる飲み物を取りに行くのは視界の中でもいささか目障りなほど頻繁で、まずい席に座ったものだと思いました。

ときどき骨休めなのか、断片的な会話が聞こえてきますが、飲み物を持って戻ってきたひとりが椅子に座りながら「8杯目!」などと言ってはニヤリと笑ったりしています。
それからも、おかわりのための往復はとめどなく続きました。

いまさらこんなことは珍しい光景でもなし、新鮮味もない話題かもしれませんが、見ればこの3人は、4人がけのテーブルを縦につなぐように占領しており、つまり8人分の椅子とテーブルを3人で広々と使っています。この日は空席のほうが多いくらいでしたから、それで直接的な迷惑が発生したというのではありませんが…。

それにしても、こういう場所で勉強するというのは、どういう感覚なのかと理解に苦しみます。仲間と一緒に勉強したいという気持ちはわかるとしても、そのために店舗の飲食のためのテーブルを目的外に長時間使用するというのはどう考えてもいただけません。

さらには友人が見たと言っていましたが、彼らの足元には大きなスポーツバッグが置いてあり、おかわりを持ってくるたびに何かをそこへさっと放り込んでおり、帰りしなにファースナーが開いているので中が見えたんだそうですが、そこには未使用のミルクや砂糖やティーバッグなどがたくさん入っていたとのこと。
こうなると、ドロボウではないのか!?

最小限度の注文をアリバイにして長時間テーブルを占領し(空いているのをいいことに8人分のスペース)、延々とおかわりを繰り返したあげくに、モノまで持って帰るというのは言語道断です。

これがいっそ万引きなどであれば、店や警察に捕まる危険もあるし、犯罪として明確な罪科があるのに対し、こういうやり方は、いわば店が定めたルールの上に乗って悪用する行為であって、最終的に罪に問われることもないことを見通している点が、なんとも現代的で抜け目がなく、その浅ましさには横にいるこちらのほうがイライラさせられました。

しかもどの顔を見ても、悪事どころか、いかにも善良そうな面立ちで、そこに却って凄みを感じます。

昔の学生時代が良かったなどというつもりはありませんが、あんなに若い頃から、ルールの死角をすり抜けるような悪辣な行為を公然とやってのけて、それを当たり前のようにして育っていくというのは、なんだか末恐ろしい気がしました。

昔のように、無邪気に互いの家に往き来できないような、いろんな複雑な背景が現代にはあるのかもしれないと思いますが、とにかく難しい時代になったものだと思います。

この3人、マロニエ君達が来る前からいて、食事が済んで、お茶をして席を立つ頃も、一向に帰る気配はありませんでしたから、きっと閉店までいるのでしょう。
あの言葉の調子ではひとり10杯として3人で30杯、テーブルを2つ占領され、ミルクや砂糖やティーバッグまで大量にお持ち帰り、それで払った料金は3人合計360円となれば、お店はたまりませんよね。

当人たちは、そういうことは関係ないし、考えもしない、もしくはIKEAは世界的な企業なんだから、それっぽっちのことは痛くも痒くもないはずと思うのでしょうか…。