1年ぐらい前だったか、正確なことは忘れましたが、『ホロヴィッツ・ライブ・アット・カーネギーホール』というCD41枚+DVD1枚という大型のBOXセットがSONYから発売されました。
ホロヴィッツが1943年から1978年までにカーネギーホールで行った主なコンサートを収録したもので、箱もカーネギー・ホールの外観を模したもので、発売当初から目にとまっていたものでした。
マロニエ君は取り立ててホロヴィッツのファンというわけではありませんが、1965年のカムバックリサイタルの冒頭の緊迫したガラスのようなバッハや、この日の興奮の頂点となったショパンのバラードなどは、きわめて深い印象を残す録音であったことは間違いありません。
子供の頃、カーネギーホールという音楽の殿堂がニューヨークにあるということを知ったのも、ホロヴィッツの存在を知ったことと同時だったことをよく覚えています。
亡命ロシア人であったホロヴィッツがアメリカに移り住んで終生暮らしたのがニューヨークで、カーネギー・ホールは彼にとっても最も慣れ親しんだ最高のステージであったことでしょう。
そこでおこなってきた数々の演奏の軌跡を網羅的に聴くことが出来るなんて、現代人は幸せです。
…とかなんとか言いながら、マロニエ君はこのBOXセットが出た時にすぐに買うことはせず、「そのうちに」という気持ちでいたのがいけなかったのです。
つい最近、ホロヴィッツの別のセット物が発売されることになり、それにも興味津々だったものの、順序としてその前にあれを買っておいかないと…と思い立って探してみると、あれ?…どこにもないのです。ネットのHMVやタワーレコードで検索をかけても出てこないので、こちらもむきになって探していると、その片鱗のようなものはなんとか出てきたものの、要するに限定発売だったものが完売してしまっており、だからもう通常の商品として検索にもひっかからないということが判明。ガーン!!!
今どきはCDもどうせ売れないのだから急がなくても大丈夫などと悠長に構えていると、こんなことになるのだと思い知りましたが、無いものは無いのだからじたばたしても始まりません。
こんなときの頼みの綱であるAmazonで検索したら、さすがにこちらではあっけなく出てきました。
どれもほとんど新品ですが、値段はほぼ定価に近い2万円が最安で、高いものでは5万円を超えるものまであるのには驚きました。
まあ、それでも大手CD店では軒並み完売しているものが今なら新品で手に入るのだし、なにより自分が出遅れたせいで、多少安く買える時期に買わなかったことが原因でもあるし、ほぼ定価なら仕方がないと納得はしてみました。しかし、やはりこのぐらいの値段になると、じゃあ直ちに購入ボタンを押すのも気乗りせず、残り一点というわけでもないから、またしても先送りにしてしまいました。
と、そんなとき。天神での待ち合わせのための時間調整のためにタワーレコードを覗きました。
過日書いたように、このところCDは負けが続いて、しばらく買うのはよそうと思っていたので、この日は正真正銘の見るだけだったのです。
見るだけなので、普段はあまり見ないコーナーなどを見て回り、積み上げられたBOXセット(大抵ろくなものがない)のところに来て、あれこれ眺めていると、ふと何か気になる模様が目に止まりました。
それを認識するのに、1~2秒ぐらいはかかったか、かからなかったか、そこは正確には覚えていませんが、とにかくほんの一瞬の空白を挟んで、あんなに探した『ホロヴィッツ・ライブ・アット・カーネギーホール』がいま目の前にポンとあることがわかり、さすがにこの時は胸がズーンとしてしまいました。
すかさず手にとって見ますが、まぎれもなく「それ」でした。
すぐに価格を見るため箱を上下左右に動かしてみると、隅の方に「9,800円」という赤い線の入ったシールが貼ってあります。アマゾンの最低価格の半分です。
迷うことなく、いそいそとレジへ直行したのはいうまでもありません。
というわけで、こんなラッキーがあるなんて、すごいなあ~とルンルン気分でしたが、これによって、このところをのCDの負け続きを一気に取り返すことができたのだと思うと、嬉しさと不思議さが半々でした。