車の月刊誌、CG(カーグラフィック)に面白いことが書いてありました。
ドイツ人とは、いかなる民族なのかということ。
永島譲司さんというドイツ在住30年余になる自動車デザイナーの方(有名なのはBMWの先代3シリーズで、あれは日本人のデザインなのです)が、長年の経験の中から書かれたものですが、読むなり呆れ返ってしまいました。
一般のドイツ人のイメージというのは、ありきたりですが、勤勉で真面目で冗談が下手で、でもバッハやゲーテ、ベートーヴェン、ハイネ、アインシュタインなど、とてつもない歴史上の偉人が綺羅星のごとく何人もいる、非常に優れた能力を有する民族というイメージがありますね。
世界の主たる近代文明の中で、ドイツ人が果たした貢献は計り知れないものがあることは誰もが認めることでしょう。
そんなドイツ人ですが、外から想像するのと、実際に長くその地で暮らしてみるのとでは、どうやらかなりの隔たりがあるようなのです。
ドイツ人は「ルールが好き」というのはあるていど認識されていることですが、実際のそれは、予想をはるかに超えたもののようです。
公園のブランコ、公衆トイレ、ホテルデパートのエスカレーターに至るまで、自己責任で使用すべしという但し書きがやたらめったら散りばめられていて、それをいちいち承諾した人だけが利用することができるようになっているのだとか。
ドイツでは何事によらず、氏の表現によれば「チョー細かいことまで」ルール化し、さらにそれを明文化するのが好きなのだそうで、書かれたものを厳守することがむしろ心地よいのか、精神的にもそれが落ち着くような気配だというのです。
たとえば、ドイツでは自販機のコーヒーから高級店のコニャックまで、すべての有料の飲み物には「何mlに対していくら」という価格と液体量が表示されていて、コーラなどを頼んでも量が正確にわかるように氷などは一切入っていないそうです。
こんなことを聞くと、ドイツ人が大好きなビールも、ジョッキには目盛りでも入っていて、まずそれを確認してからハメを外すのだろうか?などと思います。
唖然としたのは、カップルが結婚する際の手続きでした。
これから婚姻届を出そうというのに、将来何らかの理由で離婚する場合に備えて、財産分割に関する書類を作るのだそうで、そこには預金や不動産などは言うに及ばず、このテーブルはテレビはどちらが取り、この冷蔵庫と電子レンジはどちらの所有かということをすべて取り決め、事細かく書き出して、公証人の前でその書類にサインすることで法的な力を持つとあり、それがごく普通なんだそうですから、朝ドラ風にいえば「びっくりぽんや!」といったところですね。
日本でそんなことをしたら、たちまち破談になるだろうと思いました。
交通マナーに関する記述もあり、永島氏がドイツでの生活をはじめられたころ、フランクフルト市内の大通りでパーキングメーターにバックで駐車しようとすると、不思議な光景を見たとあります。
自分の車の後ろに10台ほどの車がズラーッと並んでおり、何で自分の後ろにそんなに車が並んでいるのか、はじめはその理由が皆目わからなかったというのです。
氏はその後も同様の経験を何度も何度も繰り返すうちに、ついに理由がわかったのだそうで、それによれば、ズラリと並んだ多数の車はただ単に前の車が駐車をし終えるのをずーっと待っているだけだというのです。
驚いたのはその状況で、そこは2車線の大通りで他に交通量も少くスカスカだったそうで、普通ならとなり車線から抜かしていくのが普通であるのに、多くの車は目の前の車が駐車が完了するまで身じろぎひとつせずにじーっと待っているというのです。
氏いわく、「要するに彼等って頭がタカイというか、思いつかないのである。」「目の前で誰かが駐車をはじめるとその車ばかりに気をとられるせいかとなりの車線に一瞬入れば前に行けることに気が付かない。いや、となりの車線がスカスカであることがそもそも目に入らない!良く言えば一点集中力がものすごく高いともいえるが、概してドイツ人というのはそんな具合でただただ一直線。」と書かれています。
予期していない事が起こったりしたときに頭を切り替える器用さに欠けるのだそうで、だから何にでも「規則」を必要とすると分析しています。
すべてのことに「チョー細かい規則」を張り巡らせて、それにしたがってみんながキマリ通りに動くことが前提となり、予定外のことが突如起こると、それに対応するのが不得意なんだそうで、ここまでくると規則に依存するあまり、頭も使わないのかと思えてしまいます。
ドイツも自転車の事故は問題のようで、交差点で車はスピードを落とす規則が「ある」のに、自転車にはそれが「ない」から、車に気づいてスローダウンしなければ衝突することがわかっても自転車はスローダウンしないらしく、おまけにゲルマン民族の健脚で走らせる自転車はたいてい30km/hから40km/hは出ているというのですから、相当怖いようです。
そんなドイツ人が例のフォルクスワーゲンのディーゼルエンジンの排ガス不正問題を引き起こしたのですから、これは珍しく頭を切り替えて器用な対応をやってみた結果なのでしょうか。
しかも、不正のやり方まで、ずいぶんと一直線だったようですね。