いくらなんでも

しばらく耐えていればじきに治まると思っていたぎっくり腰は、やや長期戦に突入してしまいました。

とりあえず正月休み明けに近くの整形外科に行ったところ、レントゲン写真を何枚も撮られ、電気治療や痛み止めの注射などをされて、コルセットや湿布、飲み薬などを与えられました。

いらい一進一退を繰り返しながら約3週間経過したものの、椅子から立ち上がる際などに強い痛みが続き、ついに整骨院へ行ってみることにしました。以前行ったことのある整骨院で、そこ以外に知らなかったこともあり、数年ぶりに行きました。

はじめ、アシスタントみたいな男性が体の歪みをチェックするということで、衣服の上から数カ所丸いシールを貼られ、写真を数枚撮られます。しばらく待つと、呼ばれてモニター前の椅子に座るようにとのこと。
そこに写しだされた写真の上には二三本の線が引かれており、本来水平であるべき線が腰のあたりと肩のあたりで、それぞれ傾斜しており、一見して水平でないことがわかります。
すると、その男性は「これは…かなり…」などと言い、さらにはそれを見るためにやってきた整体師が「おーぅ、これはレアなケースですねぇ!」などと不安な言葉を口にします。

すかさず治療の段取りとなり、このままではいけないので歪みから直して…かくかくしかじかと、準備されたメニューみたいなものを示しながらテキパキと話は進みます。
ついては電気治療が必要ということで、これがなんと4000円の由。
否応ない状況で「どうされますか?」と聞かれても、どうもこうもないわけで、4万円なら断るでしょうが、とにかく痛いのをなんとかしたいという一念から、やむなく了承することに。

施術台に仰向けになると、ゴムシートのようなものを腹部にペタペタ貼り付けられて、それを機械と繋いでスイッチを入れるとジンジンするような刺激が走ります。これを30分間やって、そのあとにいよいよ本来の整体らしき施術に入りました。こちらは10~15分ぐらい。
終了後はたしかにスッキリなって、これまでは立ったり座ったり、あるいは朝ベッドから出るのもびくびくでしたが、はるかに楽に体が動くようになったことは事実です(時間経過とともに元に戻りますが、一時的でも気分はいい)。

マロニエ君の印象としては、電気治療ではなく、そのあとの整体術によってすっきりしたように感じましたが、終わった後も、さんざん電気治療の重要性と、それを続けることの大切さを繰り返し説かれます。
また、治ったと思って、治療をやめるとこうなるというような図などもたくさん見せられ、とにかく継続的にかよって治療を受けることが必要なんだと、ほとんど反抗できないような空気の中でこれを言い続けられます。
むろん心底から納得はしていなかったけれど、少しはそうかも…とこのときは思いました。

支払いは初診料が2000円弱、電気治療と消費税で合計6200円ほど請求され、さらに、「間を置くといけないので始めのうちは、できるだけ毎日来てください」と言われますが、平日にそんな時間もないし、だいいちこの料金じゃたまりません。

仕方なく翌日もう一度行くと、やはり電気治療30分と、今回は10分ぐらいの整体で、このときは5200円ほど。
しかも帰りには必ず次の予約を迫るので、あいだに一日おいてしぶしぶ応じましたが、やはりこれはおかしいのではと思いました。電気治療は、要するに器具を身体にパパッとセットしてスイッチを入れると、あとは機械任せで、カーテンの向こうからは雑談やテレビの音が聞こえてくるだけ。
整体師が手や身体を使ってもんだりほぐしたりやってくれるのでもなく、なんでこれが4000円もするのか納得がいきません。

ここ、昔はもっとせっせと身体をもみほぐしてくれていたのですが、その時間はずいぶん短くなっているし、そういえばお客さんも以前に比べてずいぶん少ない様子。
それに、いつまでかかるかもわからないものを、行くたびに5000円強というのでは財布もたまらないし、なにより整骨院側のカモにされているのでは?と思うと、腹立たしさがふつふつと湧き上がります。

そこで、専門は違うものの知人の医師に電話してこのことを聞いてみると、彼は「あくまでも個人的な意見」としながらも、自分は整体などは信じていないので、これまで一度も行ったことはないし、とりわけ電気治療は「まやかし」だと断言しました。

整体そのものは、たしかに整体師はからだの要所要所のことを知っているので、施術によって一時的に痛みが取れたり、固まった筋肉がほぐれて楽になったりという事はあるとしても、それは肩がこったときにマッサージするのと基本的に同じであって、電気治療に至ってはあんな外的要因でぎっくり腰が治るなんてことは「ぜったい無い!」と云われました。

ここまで聞くと、疑いは一気に確信へと変わり、もう二度と行くものかときっぱり決断できました。
予約だけはキャンセルしないといけないので、電話で「風邪をひいたのでとりあえず明日はキャンセル」してほしいと告げると、「わかりました、お大事に。」だそうで、まあそう言うしかなかったのでしょうね。

つくづく世の中油断できないと身にしみました。
よい授業料だったと思うことに。