謎の車の中は…

幹線道路の交差点を右折すべく右側の車線を走行し、信号が赤だったので停車しようとスピードをゆるめたそのとき、左からある東北の某ナンバーのダイハツ・コペン(軽の2シーターオープンで屋根付き)が突然目の前に割り込んできました。

ほとんどこちらの急ブレーキをあてにしたような無謀な突っ込み方で、あまりのことにクラクションを鳴らすひまもないほどそれは唐突でした。
しかも割り込んだあと、前の車まで十分な距離があるにもかかわらず、それ以上前進しようともせず、マロニエ君の車の真ん前で斜めを向いて止まったまま動こうともせずに、ほとんど嫌がらせのようなかたちで「一体なんなのか!」と思いました。

さすがにおどろいて、どんなドライバーが運転しているのかと顔のひとつも見てやりたくなりましたが、リアウインドウには今どき黒いフィルムが貼られていて、中の様子をうかがい知ることはできません。

そののち前の信号が「青」になると、ようやくそのコペンも動き始めたものの、ここでも嫌がらせのように、必要以上にノロノロと動いて、その気配たるや、これはタダモノではないらしいと考え始めました。

交差点では無数の直進対向車がひっきりなしにくるので、前3台とマロニエ君は待ったあげく、ようやく右折専用の信号が出るに至って右折開始となりました。
ここでも先頭と次の2台はすみやかに右折して行ったのに対し、コペンはまたまた歩くようなペースで右折を開始。
そこまでゆっくり行くのであれば、せめて右折したあとは一番左の車線でも行けばいいようなものなのに、これがまた、その速度でどうどうと一番右車線に躍り出ます。

チッと思いながら、中央車線から抜かしてやろうかと思っていたら、一番右の車線は次の交差点では右折専用になるようで、そのことに気づいたコペンは、車線は今度は左車線に移動しました。

と、まもなく目の前の信号が「赤」になったので停車。
そこでマロニエ君は敢えて、横に並ぶべくスピードを落として、コペンが先に止まったことを見ながら右側へゆっくり横付けしました。

「さあ、どんな御仁が運転しているのか!」と思って横を見えると、拍子抜けするほどふつうの若いおねえさんが運転席に座っていて、あれだけ腹も立ち、注目もしていたのに、なんだか「期待?」を裏切られた気になりました。
「なんだ、ただの運転が超苦手な女性か…」と思った一瞬後ドアウインドごしに見えてきたのは、なんとビッグマックのような何重にも分厚く重ねられた特大のハンバーガーで、この女性、これを食べながら運転しているのでした。

真横に並んで、ついあきれて見てしまいましたが、そんなことはなんのその。
気にする様子もなく、モグモグモグモグ、しわくちゃの大きな紙を適宜開くようにしながら、あっちこっちとかぶりついています。
こちらの視線を気にしているのか、決してこっちに視線を向けることはなく、無表情にひたすら食べ続け、信号が青になるとそのままコペンは動き出しますが、口はモグモグ、手にはハンバーガーという状況はかわりません。

そのまましばらく並走しましたが、マロニエ君はほどなく右折しなくてはいけない地点に来たので、観察はここで終りとなりましたが、なんでそうまでして運転しながらあんなに特大のハンバーガーを食べる意味がついにわかりませんでした。

いくら違法でも、スマホいじりをしながら運転というのはまだどこかに理解の余地がありますが、グレープフルーツほどもありそうなハンバーガーを「運転しながら食べる」というのは想像を遥かに超えた行為でした。

マロニエ君など、テーブルで集中して挑んでも、分厚いハンバーガーはこぼしたり落としたりと、無事に食べるだけで精一杯ですが、それを運転しながらとは恐れいったというべきか、よほどの高度なテクニックなのかもしれません。

でも、やっぱり食べている合間合間に運転しているので、他の車の前へ危険な割りこみになったり、前が空いてもちゃんと詰めないなど、車の動きはもうハチャメチャ、安全かつ円滑な動きができないのも納得です。
よっぽど急いでいるのかとも思いましたが、普通なら、あんな分厚いハンバーガーを運転しながら食べなくちゃいけないほど急いでいるときは、食べるのは後回しにしますよね。