猛烈老人

最近の高齢者にはびっくりさせられることが多いらしいですが、まさにそんな体験をしました。

マロニエ君の自宅の近くに小さなスーパーがありますが、古い店舗のため駐車スペースはそれほど余裕がありません。
車が4台横に並ぶ列が4列あって、中の2番めと3番めはくっついていて車輪止めもないので、前に車がいなけれな、そのまま通り抜けて行くことも可能です。

その列に1台空きがあったので、マロニエ君が止めようと車の頭を入れていると、いきなりむこうから軽のワンボックスがサッとやってきて、しかも自分が入ったスペースを跨いで、いま正にマロニエ君が止めようとしている駐車枠の方へと車のフロントを突っ込んできました。

この時点でマロニエ君の車も1mぐらいは駐車枠へ入っていましたが、その軽は、まったくひるむことなく、「どけ!」といわんばかりに微動だにしません。
普通縦に2台分の駐車枠があって、両方から車がくれば、それぞれ手前は自分、そちらはアナタというふうにとめるのが当たり前です。

ところが、この軽はまったく後ろに下がる気配もないどころか、5cmぐらいずつあからさまに車を前進させて、対峙しているこちらに脅しをかけんばかりに、変なデザインのヘッドライトを目の前に近づけてきます。
こんなやり方には、さすがにマロニエ君も相当頭にきましたが、よくみると、ハンドルを握っているのは高齢の白髪頭の男性で、目をむいてこちらを凝視しています。
要するに前進で駐車枠に入って、そのまま前の枠に止めれば、一度もバックすることなく駐車から出発まで可能というところで、そのためには他車と鉢合わせになろうが関係ないといわんばかり。ブルドーザーよろしく相手をぐいぐい威嚇して、なにがなんでも自分のしたいようにする、そのためには一歩も引かないぞという居直り強盗みたいな老人でした。

こうなったら徹底的に動かないでやろうかとも一瞬思ったけれど、こんなところでこんな狂気のような老人相手にくだらないトラブルになったら、そのあと一日中嫌な思いをするだろうとも思うと、バカバカしくもなりました。
やむを得ずわざとちょっとだけバックしてみると、むこうは、そのわずか分をそれこそ接触せんばかりに詰めてきて、なんとか枠に収まったものだから、車内ではあとは知るかという様子で降り支度をしています。

その間、こちらもあえてその人の一挙手一投足をジーっと見つめてやりましたが、多少はそれもわかっているようでしたが、とにかくその図々しさときたら、そんなものはなんの役にも立たないほど強烈でした。

車から降りると、如実にその風貌がわかりましたが、かなり高齢にもかかわらず、この上なく険しい針のような目つきとふてぶてしげな態度は、まるで今の世の荒廃の度合い見るようで、なんとも嫌な気のするものでしたね。

年の功なんてものは、もはやはるか昔の幻想なのか、いまは多くの高齢者が、こうして歳を重ねるにつれイライラをも募らせながら、毎日を世間と勝負するかのように生きているということかもしれません。

はぁぁぁ…いやなものを見てしまいました。