R指定?

先日放映されたN響定期公演は、前後にR.シュトラウスの変容とツァラトゥストラを置き、間にシューマンのピアノ協奏曲を挟むという、ちょっと珍しいプログラムでした。
指揮はパーヴォ・ヤルヴィ、ピアノはカティア・ブニアティシヴィリ。

ヤルヴィとブニアティシヴィリは海外でも共演経験があるようではありますが、N響/ヤルヴィという組み合わせに、なぜあらためてこの女性が登場してくるのか、大河ドラマに話題の若手をムリに起用してミスキャストになるみたいでちょっと違和感がありました。
ブニアティシヴィリの演奏はこれまでにも何度か映像で接したことがあるけれど、その演奏がまったく好みではないのは言うに及ばず、あのエロ衣装でのセクシーパフォーマンスをそのまま日本でもやるのか?

どうせ録画されているのだから、怖いもの見たさでみてみたところ…やはり日本でもおやりになったようです。

この人は、ピアノを弾いているという建前のもと、合法ギリギリのところで自分の容姿や仕ぐさを見せつけることに快楽を覚えているのか、演奏家としてちょっと計りかねるものが心底にあるのでしょう。
男性と言いたいけれど、あれはもう老若男女だれが見たって、その衣装はイヤでも彼女のサイボーグのような体を見せるためのものだし、それをEテレで真面目に放送されたことにも呆れるだけ。むろんれっきとしたN響定期公演で協奏曲のソリストという「建前」があるから可能だったのでしょうが、その実質はかなり危ないものだと思いました。

子供が見るのも明らかにNGだし、彼女が登場するコンサートはR指定になってもさして不思議はないでしょう。

衣装だけではなく、強烈な真紅の口紅をひき、わざとそうなるようにしているとしか思えないヘアースタイルは、下を向くと髪は一斉に前へと落ちかかり、そこから顔を上げると、こんどは彼女の顔に黒髪が乱れるようにまとわりついて、ベッドとステージを間違えたようなあられもない表情がバンバン続きます。

たしかに演奏家はさまざまに陶酔的な表情を浮かべる人は少なくありませんが、ブニアティシヴィリのそれは音楽的裏付けは感じられず、ただステージ上で繰り広げられるセクシーパフォーマンスにしか見えません。

演奏は、やたら叩くか、はたまた聞き取れないほどの弱音かのどちらかで、いずれも練り込まれたタッチが生み出す実や芯がないため、ただのぺらぺら音で、真面目に弾いているようには(マロニエ君には)思えないもの。

時代が変わり、世の中の価値観も多様化し、クラシックコンサートのチケットが売れないから、今までどおりのことをやっていてもダメだという背景があるのはわかりますが、だからといってあれはないでしょう。

何度も何度も、量の多いカールした黒髪がドサッと顔面を覆い尽くすのは、見ているだけでもストレスになってくるし、まるで海中の藻の中に顔を突っ込んでいるか、真っ黒いモップを被って赤い口紅だけがその中で見え隠れするよう。着ているドレスも胸はギリギリ、背面は腰の下まで見えるような過激なもので、どう見ても意図して狙っているとしか思えないものです。

冒頭インタビューで彼女のネット動画の再生数が100万回とかなんとかで、これはすごい数だというようなことをヤルヴィが言っていましたが、そりゃあタダだし、クラシックのピアニストとしてはほとんど反則技に近いものだから、それならば少なくとも演奏で勝負したなんとかリシッツァのほうがずっとまともだと思います。

もちろん、今時なので違法でないかぎり、なんで勝負しようが構わない、自由だ、という意見もあるとは思いますが、少なくともマロニエ君はあんなのノーサンキューです。

拍手なども、いまいち盛り上がっている感じはなかったし、アンコールもなかった(あったとしても放送されなかった)ようでしたから、やはり聴衆にはそれほどウケてはいないのだと感じました。…それがまともだと思いますが。