雲泥の差

マロニエ君の生活圏(福岡市及びその近郊)にある回転寿司でイチオシなのは、魚米(うおべい)ということを以前書いたような気がしますが、記憶が定かではないので、重複するところがあったらご容赦ください。

魚米という店名はあまり耳にしたこともなかったけれど、元気寿司系のチェーン店のようで、ネットの店舗検索を見てもそれほど数もなくメジャー店ではないようですが、ここを知ってからというもの、ぱったり他店には行かなくなりました。

魚米の特徴は、全店すべてかどうかは知りませんが、いわゆる作り置きの寿司は一皿もなく、すべてタッチパネルから注文をするスタイルであること。さらに各テーブルへは、なんと上中下、実に三段からなる高速レーンを駆使して、注文の品がスイスイ運ばれてくることです。
くわえて、ネタが新鮮で大きいことも特筆すべきで、にもかかわらず寿司メニューの多くが100円という安さ。店の内装は白を基調とした清潔感あふれる都会的な雰囲気で、従来の回転寿司の標準からすれば完全に一歩先を行くものだと思います。

もともと回転寿司は、テーブル脇のレーン上にあれこれのお寿司が流れている中から好きなものを皿ごと取って食べるというものでしたが、これだと自分のテーブルの位置が川(レーン)の上流にあるか下流にあるかでかなり条件が違ってきます。仮にむこう側に食べたいものが流れていても、こっちまで周って来る間に途中で誰かに取られてしまう可能性があり、不公平感がありました。(…昔の話ですが)

そうなると別途に注文するしかないわけですが、テーブルまでのお届け方法として「注文品」として流れに混ぜ込むか、店員がお盆に乗せて運んで来るかだったものが、そのうちに注文したものをダイレクトにテーブルに届けるための、専用高速レーンが設置されるようになりました。
注文も、いまやタッチパネルを採用する店が主流になっているようです。

さて、回転寿司といえば最も有名なのがスシ❍ーだというのは多くの人が認識するところでしょう。
マロニエ君も、十年ぐらい前にいちど行ったことがあるものの、それほど美味しいとは思えず、いらい一度も行ったことがありませんでした。しかし、土日などはいつ見てもスシ❍ーの駐車場には誘導員まで立っているし、店の出入り口付近は順番待ちの人であふれており、その人気の高さ、いわば支持層の厚みが窺えます。

TV-CMなどを見ても、いかにも新鮮そうな大きなネタがスローモーションで舞い降りてくる様子など、見るからに魅力的な感じに作られており、もしかしたらグッと進化していて美味しくなっているのかも…という気がしなくもありません。
それで友人と調査がてら行ってみようかということになり、先日スシ❍ーで食べて来ました。

果たして、結果は惨憺たるものに終わりました。
たまたま行った店のみでの感想なので、すべての店舗で共通することかどうかはわかりませんが、まず店内の雰囲気が暗いし、タッチパネルではあったものの、棚の上部の固定タイプである上、パネルが超鈍感で、指先が白くなるほど力を入れないと反応しないのは、もうこれだけでいきなりテンション落ちまくりでした。

また、注文しても、ゆるゆると流れる川に他の商品と混ざってゆっくりゆっくりやってくるのは、ようするに回転寿司の第一世代そのままで、新型の高速レーンの快適さ(とくに魚米の三段レーン)を知る身には、あまりの落差に大きなストレスを覚えるほど。とくに案内されたテーブルは川が折り返してくる反対側だったので、その待ち時間の長さときたらはっきりいって苦痛以外の何ものでもありません。
まさに快適な新幹線に対してガタンゴトンの在来線のような違いでした。

肝心の味もあくまで普通(もしくはそれ以下?)でしかなく、「さすがは人気店だけのことはある!」と感心するような要素はまったくナシ。
それどころか、より多く注文させるためか、ネタを相対的に大きく見せるためか、シャリも小っちゃいしネタもコマーシャルでみるようなダイナミックなものひとつとしてなく、ただ上にぽちょんとのっているだけのものでした。

席も座面が擦り切れていたこともあり、たまたま古い店舗だったのかもしれませんが、食器類も激しく傷だらけで、醤油差しの上のゴムも弾力がなくなっているなど、いつもの魚米とはまさに雲泥の差でした。

帰りのクルマの中で「なんであんなに人気があるんだろうね…」とつぶやく友人。ごもっとも。
「ま、知名度なのかね…」と返しながら、不満タラタラなのに身体はいちおう満腹という、妙な気分のまま帰途につきました。

ひとつわかったのは、あんなテンポじゃ客の回転率がかなり悪いので、慢性的な行列を生むのか…とも思いますが、味の面では人気の理由がよくわからないまま、いちおう目的は果たしたとして調査終了です。