こわいのはどっち

先週のある夜、福岡市西部にある国道を市内方向に向かって走っていたときのこと。

片側2車線の右車線をマロニエ君は流れに乗って走っていたところ、突如、背後から尋常ではないスピードで迫ってくる車があり、思わず何事かと身構えました。
ほどなくその車(トヨタのコンパクトカー)はマロニエ君の左側から猛然たるスピードで抜き去っていき、その後も右に左に車線変更しながら交通の流れを縫うようにして走って行きましたが、ところがそれに続いてシルバーのクラウンが、さらにその後ろから黒い軽自動車が、同様のスピードでこれに続きました。

驚いたのはもちろんですが、そのゆくえに注目していると、3台は互いにもみあうようにしながら激しく左右に車線を変え、ときに右折車線にまではみ出しながらアッという間に視界から消えていきました。

路上では、一台飛ばす車があると、だんだん周りの車がこれに引き込まれるようにスピードアップし、なんとはなしにバトルのようになることがあるので、はじめはその類かと思いました。しかし3台のスピードはあまりに過激で、なにかトラブルでも起こったあげくの暴走ではと思いつつ、とりあえず先で事故らなければいいが…と思ったぐらいでした。

それからしばらくして、国道と外環状線という幹線道路が交差する大きな交差点(そこでは片側4車線)に信号停車しようとすると、前方にただならぬ気配があり、近づくと、信号停車中の車から何人もの若い男性が降りてきて激しく言い争いをしています。

咄嗟に、さっき追い越していった3台の連中であることがわかり、おお!やっぱりこういうことになったんだ!と思わずヤッタ!みたいな感じで(笑)、信号停車中はかなりジロジロ見物してしまいました。
どうやら、はじめに抜いていった先頭の車のドライバーが中年の男性だったようなのですが、彼を取り囲んで続く2台に乗っていた若い男性たちが興奮した様子で中年男性に詰め寄っており、その中のひとりは相手の襟首まで掴んで激しく揺さぶるなど、まあ早い話が路上でケンカです。
これを見た助手席の友人は「うわぁ、かわいそう…」と口にしましたが、たしかに中年ドライバーが運転上のことで若者とトラブルとなり、多勢に無勢で言いがかりをつけられてるように見えたのが、この瞬間の目撃者としては率直なところでした。

その後、信号が青になり、しぶしぶ現場に別れをつげて走っていると、しばらくして、なんとくだんの中年ドライバーが横をスーッと抜いていきました。
どうやら話がついて若者達から開放されたのか、こちらも内心「…散々でしたね」という気分でいたのですが、そのすぐ後から若者らの2台の車が、嫌がらせのように中年ドライバーの車を次々に追い抜いて走り去って行きました。

まあ、普通ならこれで終わりというところでしょう。
ところが、若者らの2台がいなくなったあとも、この中年ドライバーの車はしきりに右に左に車線変更したり、無理に隣の車線に割り込んだりの異様な動きを続ける始末で、「え、どういうこと?」と呆気にとられました。

ただ単に早く行きたいのであれば、スピード違反の問題は別にして、さっさと行けばいいのに、この人、やたら周りの車を煽るような、見ていてどうしたいのか、まったく理解できないような意味不明な動きを繰り返しており、だんだん、この中年ドライバーのほうが普通じゃないのだということに気づき始めます。

もちろん事の起こりの場面を見たわけではないけれど、この調子では、あの若者たちの車にもこういう動きでけしかけるようなことになったのだろうと思われました。
それで腹を立てて、火がついて、追尾してなんらかの報復をしようと思ったのでしょう。

危険運転は理由如何に問わずいけませんが、少なくとも動機はそうだったのだろうと思いました。

中年ドライバーも大したもので、普通なら路上であれだけ激しい状況となり、交差点で車から降ろされて大勢に取り囲まれ、襟首まで掴まれ面罵されたというのに、その直後、性懲りもなくまだこんな運転をしているのですから、マロニエ君としてはよっぽどこの男性の神経のほうに呆れ返りました。