逆の責任

どうもここ最近の気象は以前とは違うらしいことは多くの人が感じていることですが、今年は8月という早過ぎる時期から、台風とはあまり縁のないはずの東北地方や北海道にまで上陸するなどして、なんだか嫌な感じがしていました。

そんな中、ついに12号が南の海に発生し、今度は九州を目指しているらしい。
東北・北海道と慣れない地を荒らしまわった台風が、次はいよいよ九州沖縄という本拠地に到来というわけか、先週後半からなにかというと台風の進路予想図に目を留めるようになりました。

地震よりマシとは思うけれど、台風も非常に嫌なものであることに変わりはありません。
とくにマロニエ君宅は、隣家も含めかなりの大木があるので、万一のことを考えると気が気ではないのです。

九州直撃がどうやら確実というのがわかってきたのは金曜のことで、それからというもの、台風に備えての食料品の買い出しや、外の植木鉢やら何やらを玄関に入れるなど、その準備に追われました。
とりわけ今回の12号は速度が7~15km/hとかなり遅く、それだけ暴風雨の滞在時間が長いというようなことをニュースは言っていて、せっかくの土日もこの台風のおかげでお流れになったのはいうまでもありません。

時間の経過と共に、進路や到達時間が詳細になり、北部九州の台風通過は日曜夜から月曜午前中ということで、土曜の夜まではなんとか出かけることができたものの、さすがに日曜は迫り来る台風に身構える一日となりました。
「嵐の前の静けさ」という言葉があるように、日曜は我が家の周辺は終日、ふだんとはまったくちがう静けさに包まれて、その異様な静寂がいよいよ魔物が現れる予兆のようで、これはもう来るんだと観念しました。

ところが、夜のテレビニュースを何度か見ているうちに、画面に映し出される南九州の様子には不思議なほど風が吹き付けている様子はなく、リポーターの背後にある樹木も、ほとんど静かに枝を伸ばしたまま。

その後、ニュースを伝える言葉の中にもちょっとずつ変化が現れ、「この12号は、コンパクトな台風ですが、そのぶん突然風雨が強くなる可能性があり、充分注意してください。」などと言い始めます。「とくに北部九州では猛烈な雨が予想され、5日は200ミリを超えるところも…」などと、むしろ大雨に注意というようなことを言っています。
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明け方に長崎県に上陸し、昼前に福岡県を通過という予想なので、問題は明朝から昼までということになり、今これ以上気を揉んでも仕方ないということで日曜夜はとりあえず眠りにつきました。

翌朝目を覚ますと、多少風が強くなって雨でも降っているのかと思ったら、どうもベッドの中にいる限りではそれらしい気配がまったくなく、さっそく外を見てみると、なんと風はおろか木々の枝葉は微動だにしておらず、それどころかうっすら太陽の光さえ射しているではありませんか。
木が折れたり倒れたりということが心配だったので、ともかくその危険は回避されたようでホッとはしてみるものの、これはいったいどうなっているのかと思いました。

TVをつけると、8時頃だったか「今、通過の真っ最中…」みたいなことを言っていますが、「うそぉ…」まるで喜劇でも見ているかのように現実にはなんにも起っていませんでした。
それからほどなくして台風は温帯低気圧になったとか。
風は全然吹かない、大雨どころか、小雨すらなく、この3日間すっかり騙されて過ごしたようで、気がつけば鳥の声などがしているのがずいぶんと嘲笑的に聞こえたものです。

どうやら最近の報道は、責任回避が何より優先のようで、少しでも小型台風だとか大したことないと言うことで視聴者が油断し、それでもし万一のことがあったら責任問題になるということなのか、ともかく大げさに大げさに発表する傾向があるようです。

少しぐらいそういう気持ちが働くのは分からないではないけれど、ものには限度というものがあり、これではまさにオオカミ少年のごとく、視聴者が逆に災害報道を割り引いて聞いてしまうという危険に繋がりはしないかと思いました。

今回の台風報道と結果のあまりにも無残な食い違いは、大したことなくてよかったというより、完全に気象庁とマスコミに騙されたというものでした。このため多くの学校は休校になり、休業になった会社も多くあったようでしたが、その責任はないのかと思ってしまいました。
備えあれば憂いなしとはいうけれど、やはり報道というものには正確さのクオリティというのは求められて然るべきで、なんでもかんでも最大限の報道をしておけば間違いないだろうというのでは、ただ世の中をむやみに不安に陥らせるだけだと思います。

正確な報道を前提として、万全の対策をとるという順序でなくてはならないとマロニエ君は思うし、今回のようにほとんどウソに近いような報道では、いかに安全第一とはいえ、いかがなものかと思います。