お役所体質の怪

一昨日、運転免許証の更新に行ってきました。
マロニエ君はこれでもいちおうゴールド免許なので5年ぶりの更新です。

いざ行ってみれば、何ほどもない簡単なことなのに、「来年は更新…」「今年は更新…」という感じで長いこと心の中にぶらさがっていた事なので、とりあえず終わってホッとしました。

出発が予定より遅れた上、かなりの渋滞でもありもし間に合わなかったら…とハラハラしながら、裏道ばかりをジグザグに走り抜けた結果、なんとか間に合いました。

少し前に届いていたハガキには、午後の受付は「15:30まで」とあり、その10分前の到着でしたが、この時間帯に来る人は少ないらしく、ええ?と思うほどガラガラ状態でした。
福岡の運転免許試験場は、美術館のようにやたら大きくて、こんな広い施設が果たしてどういうときに必要になるのか想像ができず来る度に不思議ですが、朝一とかならそれなりに納得できるのかもしれません。

云われるまま所定の書類に記入して受付に提出すると、まず最初が視力検査です。

自分でも視力が落ちたなぁという自覚があるので、今回はもう裸眼では無理だろうという危惧もあり、いちおう鞄の中には夜間の運転で使っているメガネを携帯していたのですが、直前に念のため目薬をさし、半分諦め気分でいざ検査に挑むと、ややきつい感じもないではなかったものの、いちおう裸眼で「合格」となり、心のなかでガッツポーズ。

考えてみると5年間にも同じ心配をしていたので、次はもうだめに決っていると思っていたのですが、嬉しい誤算でさらに5年伸びたというところです。

手続き開始から新しい免許証を手にするまでには、全部で5~6回の受付とか検査とか窓口への書類提出といった段階を通過するのですが、ここは言うまでもなく公的な施設なので、むろん民間とは違うのは百も承知だけれど、いかにも役所然とした感じの人がたくさんいることは目につきました。
時間帯が遅かったので、更新に来る人に対して関係者のほうが多いのもやむを得ないとしても、その人達の半分くらいは、いかにも手持ち無沙汰なようで、仕事中という緊張感は無いもしくは希薄で、かなり響く無遠慮な声でずっと私的なおしゃべりをしていたのはいささか気に障りました。
とくに、講習が行なわれる教室の入口(つまり廊下)に立って「緑の札をお持ちの方は、こちらにお入りください」というだけのことに、なんで大の大人が三人もいて、しかも大きな声で延々とくだらない私語をしているの?と思いました。

ここが一番ひどかったけれど、ほかでもとにかくおじさんおばさんたち(いずれも職員)のおしゃべりが盛大すぎて呆れたというか、少しは慎んだらどうかと思いましたね。

さらに驚いたのは、30分の講習に出てきた指導員のような方ですが、そこそこご年配とはお見受けしましたが、とにかくはじめの第一声から最後まで、ずっと言語不明瞭な上に早口が重なり、ほとんどなんて言っているのかわからないのはちょっとショックでした。

手許には2冊の冊子があり、「何ページを開いてください」というのはかろうじてわかったし、そこには決まりきったような安全運転に関する記述があって、しゃべっていることは文字を見ればなんとかわかりますが、耳だけで聞き取ることはほとんど不可能でした。
しかもこの方、来る日も来る日も同じことをされているのか、みょうに手馴れていて、しゃべり方もへんな抑揚がついてものすごい早口だし、手許のノートパソコンを操作して、正面のホワイトボードに文字やグラフのようなものを次々に映し出したりと、へんなところの手際だけはよくて、そのトークとのギャップは見ていてとっても奇妙でした。

ただ座っているだけの受講者を相手に、ちゃかちゃかと事は進行し、腕時計をチラチラ見ながらあと5分というところになると、ちょっとした宣伝や交通協会への入会の勧誘などに移り、それらをいうだけ言うと、まるでつむじ風のように講習は終了しました。
受講者はきっとみなさん内心では驚かれていたと思いますが、そこはお互い空気を読む日本人であるし、赤の他人同士、黙って立ち上がりひとことも言葉を交わすことなく教室を後にしました。

別の場合なら聞き取れないトークに苦情もでるでしょうが、ここでは免許更新さえ済めばいいことなので、それ以外のことは知ったことではないというわけです。

階下に降りると、1階ロビーの傍らにある専用窓口で新しい運転免許証をそれぞれ手渡され、各自、無感動な表情で眺めながら帰って行きました。
外に出ると、静かな曇り空が一面にひろがり、駐車場まで言いようのない変な気分で歩きました。