家具イベントで

ちょっとした棚というか小抽斗のようなもので、安くて良い感じのものがあれば欲しいと思っていたところ、友人が福岡国際センター(大相撲九州場所の会場)で大規模な家具のイベントのようなものをやっているというので行ってみることに。

ネットで調べると、たくさんの家具屋が共催でやっているようなもので、展示即売であるにもかかわらず入場料があることにまず驚きました。ただし、ネットに招待券のようなものがあり、これをプリントアウトして名前を記入すれば無料になるというもので、それを準備して会場に赴きました。

先月下旬の日曜のことでしたが、夕方であったためか車も難なく止められて、会場入口でプリントアウトした紙を手渡すと、いきなりマイクで「〇〇家具店の方にお知らせします。お客様がお見えになりました。」とあたりじゅうに響きわたるボリュームで大々的に言われてびっくり。
ほどなく首に名札をぶら下げたその家具店の女性が現れ、その人の先導でうやうやしく会場内に案内されてやっと中に入ることができました。
とはいえ、こっちはただ遊び半分で見に来ただけなのに、このままずっとついてこられてはたまらないので、自由に見せていただくからと案内は辞退したものの、この時点でなんだか想像と違うところに来てしまったような感じがありました。

広い会場内にはあれこれの家具がびっしり並べられてはいるけれど、思ったよりお客さんは少なく、それ以上に販売員がたくさんいるという印象。
ブースごとの壁や仕切りこそないものの、多くの業者が一同に会してさまざまな商品を展示しているらしいことがわかります。

全体の印象としては、なんだか茶色な感じで、今どきの家具としてはやや古臭い気もするけれど、まず目に入ったダイニングセットなど軽く50万60万だし、どれを見てもとても気軽に買えるような価格帯ではないことに驚かされました。

家具の世界というのがどんなものかマロニエ君は知らないし、知っているのはたかだかイケアやニトリといったところなので、そもそもこちらの基準が低すぎるといわれればそれまでなのですが、とにかくどれを見ても立派なお値段ばかりで10万円以下のものなんて数えるほどしかありませんでした。
しかし、見た感じそれほど高級家具とも思えなかったし、正直言ってセンスも野暮ったく、こんな価格帯のこんな家具って誰が買うんだろうという疑問ばかりが頭に浮かびました。
いっそ高級品を求める人は、お家騒動で有名な家具屋などに行くのでしょうし…。

さらに印象的だったのは、販売員らしき人はかなり大勢いるけれど、そこに若い人の姿は少なく、どちらかというと渋い表情の年配の男性が圧倒的に多いことでした。しかもどの場所でもちょっと見てみようかと商品に近づいたとたん、間髪入れずこのおじさんたちがわっと近づいてきて一方的に商品説明をはじめます。
こちらとしてはちょっと見ているだけで、いくら説明されても買うわけではないし、また簡単に買える金額でもないので、すぐにその場を離れるような動きになります。で、少しでもモノに近づくと、待機しているおじさんたちが吸い付くように寄ってくる、その繰り返し。
おまけにお客は少なめで、だからますますこっちが見張られているみたいで当然ながらゆっくり見るということは不可能。

きっと昔ながらの売り方なのかもしれませんが、近づいてきた客はすかさず捕まえるといった空気がぎらぎらしていて、お客さん側の気持ちや心理をまったく考えていないような感じでした。
中にはあの強力な接客に押し切られて、買わされてしまう人もいなくはないでしょう。

というわけでどの角度から見ても、こちらの求めるものとは違う世界だったので、早々に会場を出て、ついででもあるしその足でイケアに行ってみました。
するとまあ、理屈抜きにオシャレで、明るく、スタイリッシュで、しかも低価格。店自体もいいようのない色彩と楽しさにあふれていて、なんだかそのあまりの違いに圧倒されてしまいました。

さっき見た日本の家具は、品質ははるかに優れているのだろうと思います。
お客さんに運搬や面倒な組み立てをさせることもないし、材料なども格段にいいものを使っているのでしょう。
それでも、あの価格と売り方とセンスを選択する人って、やっぱり多くはないだろうと思いました。
良い悪いではなく、確実に時代は変わってきているということだと思ったしだいでした。