少し前に小抽斗のようなものを物色中と書きましたが、けっきょくイケアのチェストを購入することになりました。
価格もできるだけ安いほうがいいけれど、家具は部屋の中でいつも目にするものなので、日本の大手廉価家具店の製品にありがちないかにも薄っぺらな感じであるとか、パッと目はモダン風であっても、その雰囲気に日本的安物独特の「あの感じ」が漂うのも嫌なので、そうなるとイケアしかありませんでした。
ただ、イケアも問題がないではありません。
センスもよく温かな雰囲気もいいのは好ましいけれど、ここの製品には「組み立て」という難作業が待ち構えています。
これまでにもイケアの家具は何度か購入していて、そのつど友人の助けを借りながら組み立てをやってきましたが、それらの経験からも、ものによってはかなり大変だったという印象があります。
店頭にもイケアの特徴として大書してあることは、製品の質に対して価格が安価な理由は、購入者が手ずから組み立てることによって大幅なコストカットを実現しているという趣旨のこと。
以前買った伸縮式ダイニングテーブルやソファアも大変だったけれど、今回買ったのは引き出しが大小8つもある大型のチェストで、その組立はよほどだろうなあと思い悩んでいると、なんたる偶然か、ちょうどこの時期だけ「すべてのチェストが15%off」となっていて、もうこれは一念発起して組み立てを頑張るしかない!となってしまって、覚悟を決めて購入しました。
そのサイズからして、とても自分で車に乗せて帰れるようなものではないので、配送を依頼したところ、数日後、重くて分厚い大きなダンボールの荷が3つも玄関に運び込まれて、これを見ただけですっかり怖気づいてしまいました。
友人が来てくれるまで玄関に放置しておいて、先週末ついに箱を開けるときがやってきました。
さまざまな形や大きさのパーツが、まるでパズルのように見事に収まっており、それを床に順序良く並べていきますが、その数は何十個にも及び、木のダボやねじや金属の留め具のたぐいは、お得用のナッツの袋のようなもので3つにわかれていて、それぞれにずっしり入っているあたり、もう数を数える気にもなれないようなとんでもない量です。
ご存じの方も多いと思いますが、イケアの組み立て説明書には一切文章がなく、項目ごとに図解のみで組み立ての手順が記されています。
ここで大事な点は、決してわかった気になって先走ることなく、徹底して説明書の手順通りに組み立てることで、少しでも順序を間違えたり独断で先回りしたりすると、必ずあとの工程でつまづきが生じてやり直しということになりますので、面倒でも説明書に記された手順には絶対に逆らわないこと。
大変なのは、図にあるパーツを金具ひとつまで間違えずに厳格に選び出すことですが、これがかなり苦労させられる点です。
中にはほとんど同じように見えて微妙に違うもの、同じ大きさの板に開けられた穴の位置や数がわずかに異なったりすることで、これをひとつでも間違えると完成できないという怖さがあり、それだけでかなり神経を使います。
それにしても今回のチェストは過去最高記録となる大変な組み立てで、店頭で見る外観からは想像もできませんが、木製パーツだけで50以上、金属類のビスや木製ダボなどのパーツに至っては約400個に達しており、組み立て説明書の工程数は46段階にも及び、荷をほどいたときは驚き呆れ、こんなものを購入したことを後悔したのも事実でした。
それでも敢えて組み立てに着手する事ができたのは、こういうことがわりに好きな友人の存在でした。
作業開始から3日目に完成したときは、やはり感慨ひとしおというか、文字通り達成感がありました。
率直にいうと、家具の組立というより、ほとんど日曜大工に近いものがあり、プロによる周到な設計とパーツが揃っているというだけで、素人にはかなり難しい部分も少なくないのは、緊張とため息の連続でした。
これだけの組み立てができる人というのはいろんな意味でかなり限られると思われ、まず一人では無理だし、こういうことの苦手な人とか高齢者なども到底できることではないと思われました。
作業中つくづくと感じたことは、これだけ込み入ったことを一般のお客にやらせようという発想がまずすごいというか、そこからしてまったく日本的ではないと思わざるをえません。
しかし、実際にやり始めると設計も見事だし、各パーツの精度も高く、よほど頭のいい人が作っているのだと思います。
これだけの組み立てに関わることで、普段は気にも留めない家具というものの作り方や構造が体験的によくわかり、とても勉強になることも事実です。
出来上がりは堂々たるもので、雰囲気もよく、いい経験になりました。