理解不能

今どきの人の行動を見ていると、やたら悪意に解釈する気はないけれども、ときどきその心中を図りかねることがあります。

例えば、満車の駐車場などで出る車を待っていると、人が戻ってきて車に乗り込んでも、ここからが不自然に長い時間を要します。
昔なら待っている車があることがわかれば少しでも急いで出るなどして、スペースを譲ったりしたものですが、最近ではそんな状況だと、逆にわざとじゃないかと思うほどゆっくり荷物を積んだり、何かゴソゴソと車内の整理のようなことが始まったり、エンジンが掛かってヘッドライトまで点灯しても、それからが異様に長くかかったりします。
こちらも少し近くに寄ってハザードを点滅させていたりするので、待っている人がいるということは十分わかっているのに、とにかく時間をかけるだけかけたあげく、いくらなんでももう動くだろうと思っていると、今度はスマホをいじり始めたりで、こんなパターンはもはや珍しくないほど蔓延しています。

そんなことをしているうちに、別の場所が空いたりすれば、こちらもすかさず空いたほうへ入れるのはいうまでもありませんが、すると故意か偶然か、はじめに待っていたほうの車もスルスルと動き始めたりして、呆れることがあります。

他車も待っているようだから、できるだけ早く譲ってあげようの逆で、待たれているからあえて動きたくない、駐車スペースを明け渡したくないというささやかなイジメの心理のあることが伝わってくるもので、こういうこともストレス社会だなぁと思うしだい。
せっかく自分が止めている場所を他人が欲しがっているということは、それを確保している今の自分はそのぶんの既得権を有する立場で、出るタイミングはあくまでも自由なのだから、その自由枠を最大限行使して合法的な嫌がらせをすることで、いっときの快を得ているのか。

また、こんなことも。
ある日の夜、ミスタードーナツにドーナツを買いに行った時のこと。
マロニエ君が店のドアに近づこうとすると、タッチの差でアラフォーぐらいのおしゃれな女性がツーンとした感じで先に店内に入りましたが、これが運の尽きでした。
時間的なこともあってか、売り場には店員さんがひとりだけで、この女性もマロニエ君も「持ち帰り」だったのですが、そのドーナツ選びにかける時間の長さときたら、そりゃあ尋常なものじゃありませんでした。

店員さんも、持ち帰りと聞いて白いトレーとトングを左右の手に持って構えているのですが、ゆーっくりと全体を見回し、少し腰を折った格好で視線を右から左へ、今度は左から右へ、上から下へ、かとおもうと斜めに視線は移ろい、その熱心な様子は芸術鑑賞じゃあるまいし、なかなか一つ目さえ決まりません。
これはどうなるのかと思っていたころ、ボソッとつぶやくような声でなにか言うと、店員さんもすかさずそれをトレーに載せますが、あくまで1個だけで、その次がまた決まりません。
こんな調子では先が思いやられて、マロニエ君はその女性の横から、何にしようかと見たり覗いたりしてみますが、それでもこの異常なペースはまったくびくともせず、正直マロニエ君もイライラしてきたし、店員さんもきっとそうだろうと思っていると、やはりそうだったのか…二度ほど目が合いました。

いつ果てるともないこの状況で10分ぐらい経過した頃でしょうか、さすがに店員さんもずっと棒立ちになっているこちらのことを気の毒に思ったらしく、飲食スペースでコーヒーのおかわりを注いで回っている男性が戻ってきたチャンスを捕まえて、小声で私の方を接客するように促してくれました。
別に時間を計ったわけではないけれど、この女性客はひとつ選ぶのに平均2分ぐらいはかかる感じで、しかも一種類につきあくまで一個で、最終的にわかったところでは7個買っていたようでした。単純計算でも14分ですが、たしかにそれぐらいかかった気がします。

たかが(本当にたかが!)ドーナツを買うのに、何でそこまでできるのか、そもそもドーナツなんてそこまでして厳選吟味するようなものじゃなくて、もっと気軽に楽しむおやつで、マロニエ君には到底理解できません。
譲り合う気持ちの欠落やうしろに人が待っていることがまったく気にならないのか、あるいは駐車場と同じく、人が待っているからなおさらゆっくりするのか、お客として当然の権利だと思っているのか、あるいは何も意識できないほどドーナツ選びに全神経が集中しているのか。

マロニエ君はとなりのレジが開いたことで、ありすぎる時間ですっかり決めていた3種☓2=6個をつげるとそれらは手早く箱詰めされましたが、いかんせん遅すぎたようで、お釣りを待っているタイミングで、なんと、またして一歩先に隣の女性が先に店を出て行きました。クー!
しかも駐車場では、隣の車の運転席にその女性が乗っていてまたびっくり。
ここでもすぐに車を出そうとはせずに、今度はスマホを頬に当て、悠然とどなたかと会話のご様子でした。