「価格相談」

もっぱらネット上でのことが多いように思うけれど、一部のピアノ店の価格表示に意味不明なものがあり、その真意がどうにも解せません。
いっそ価格は一切書かず、知りたい人はコンタクトを取って問い合わせるというスタイルに徹するのであれば、それはそれでひとつの潔さかもしれませんが、マロニエ君がどうしても釈然としないものに「価格相談」あるいは「価格応談」という言葉が使われること。

これはどういう意味なのか、ずいぶん前から疑問をもっていますが、いまだに確たる意味はつかめません。
とくにスタインウェイやベーゼンドルファーなど、高級ピアノの中古品にそれが多く、しかも同じ店が日本製ピアノも売っていたりすると、それらには中古品でも一台一台価格が明記されているのに、輸入物になるとなぜか上記のような謎の表示になって、一切具体的な価格を示さない店をときどき目にします。

価格を書かないというのも場合によりけりで、たとえば歴史的な価値のあるものでなかなか値段のつけにくいものとか、本来は非売品扱いだけれども、ぜひにと懇望されれば絶対売らないでもないというような特殊なケースは場合によってはあるだろうとは思います。

しかし、輸入品で高額というだけで、いわば普通の中古の輸入ピアノに対して一切価格を明かさず、しかし商品としてはしっかり掲載して販売をアピールするというのは、どうにも腑に落ちないわけです。

物を売ろうというのに、価格を表示せず「価格相談」とするのは、悪い解釈をすれば相手を見て決めるということでしょうか。
相談ってどういう相談をするのかもわからないし、相手しだい交渉しだいで高くも安くもなるのか?という不安も覚え、そういう店はなんだか信頼できない気がして、あまりいい感じがありません。
悪い言葉でいうなら、店側からこちらがチェックされて、カモだと見定められればふっかけられそうな気もしなくもありません。

また相談というからには、じゃあ相談すれば安くなるのかとも思いますが、やはり現実的にはそういうものでもないでしょうし、おそらくは相場より高いのだろう…という気がします。

考えれば考えるほど「価格相談」というのは店側の都合ばかりを優先したやり方のように思われるし、悪くすれば、その店と関わりを持ったが最後、説明攻勢をかけられて、話はお店主導でもっていかれるのではないかと思ってしまいます。
平均的な相場より高額であることを、他店の批判を交えながら客の不安を煽りつつ、だから当店のピアノは内容に対して妥当(もしくは割安)なものですよ!と説き伏せて、あとからトラブって苦労するより、結局は少しぐらい高くてもちゃんとしたものを我が社で買われるほうが賢い選択であるというような理屈ではないかとも思います。

また、うちは価格では勝負はしていません、輸入ピアノといっても程度や状態は千差万別で、あくまでも最高の品質と技術をお客様に提供することがポリシーで、価格もそれに見合ったものですというような理屈立ということも考えられます。
でも、最高の品質と技術をお客に提供することと価格を表示することがどうして両立しないのか、やはりマロニエ君にはきれいに納得することはできませんし、だったら価格を表示した上で、自社の信念をしっかり訴えればいいだろうと思います。

また、それだったら国産ピアノを含めてすべて「価格相談」すればいいものを、そうしないのも理屈が通らない。
どうしても考えてしまうのは、やはり利幅の大きい高額商品であるから、それを買おうとするリッチな人を相手に、できるだけ高く販売したいという狙いのように思えてなりません。

というか、それ以外に、わざわざこの言葉を使う意味がマロニエ君にはどうしても見当たらないのです。

たしかに輸入ピアノの販売には、でたらめな業者がいることも耳にしますし、実際そうなんだろうとも思います。
でも、この「価格相談」という文字を見ると、小池さんじゃないけれど情報公開されないブラックボックス的精神を見るような気がしてしまうのです。