なぜだろう?

調律料金に関することで、以前から疑問に思っていたこと。
それは、なぜアップライトとグランドでは料金が異なり、さらにはグランドでもサイズによって料金が異なるのだろうということ。

マロニエ君はむろん調律師ではないから、アップライトとグランドでは、一口に調律といってもどれだけ仕事量が違うのかはわからないけれど、例えばアップライトで12000円なら、グランドは15000円というように、多くの場合その料金には差があるのが一般的です。

この場合の3000円は何が違うのか、乱暴にいうと似たような作業をタテでやるかヨコでやるかの違いのようにも見えないこともないわけです。
そこは調律師さんに聞いてみればわかるのかもしれないけれど、まだ聞いていないので、現時点では疑問は疑問のまま放置されているわけです。
逆にいうと、アップライトの調律ってグランドに比べたら2割がた楽なの?とも思ってしまったり。

というわけで、アップライトとグランドでは構造も違うので置いておくとして、グランドの調律に限っていうと、サイズによって調律料金が違うというのはまったくもって納得のいかない部分なわけです。
奥行き2メートルを境にしている場合もあれば、コンサートピアノは別料金となっているのを見かけたりしますが、そもそもその区分の基準ラインも結構バラバラです。
しかも、コンサートの調律ではなく、調律するピアノがコンサートグランド(もしくはそれに準ずる)の大型になると、料金もそのぶん高く設定されているというもので、その根拠はなんだろうと思ってしまうのです。

普通サイズのグランドでも、コンサートグランドでも(アップライトでも)、キーは一般的には88鍵であることにかわりはないし、弦の数だってほとんど違いなんてありません。
コンサートピアノだからといって、まさかチューニングピンを回すのに倍も力が要るわけでもないでしょう。
強いて言うなら、鍵盤からアクション一式の奥行きが小型グランドと大型グランドでは少し違うぐらいですが、そんなの技術者にすればものの数ではないはずですし、少なくとも請求金額に反映させるほどの違いとは思えません。

じゃあ、小型グランドよりも、大型になるほどより丁寧な仕事をするのか。
そんなことがあればそれ自体が問題でしょうし、まさか純然たる技術料をピアノのボディサイズで決めているとしたら、まるで病院に行って身長150cmの人より180cmの人のほうが医療費が高くなるようなもので、そんなこと通用する話ではありません。
あるいは大きなピアノは、サイズが大きいのだから調律料金も大きくなるということなのでしょうか。

実はこの点を、何人かの調律師に質問したことがあるのですが、「やることは同じです。」という答えだったので、本当は料金にサイズ別の区分を設けている人にこそ聞いてみるべきで、まだそれは果たせてはいません。

すんなり理解できるのは、定期調律に対して、何年も放置されたピアノを託された場合、内部がどんなことになっているかわからず、すべての面で定期調律より多大な労力を要する仕事になる場合があるので、これは料金が違ってくるのは当然だと思います。

もうひとつ不思議なのは調律の「出張料金」というもの。
もちろん、お気に入りの調律師さんが地元の方でない場合などは、遠路はるばる来ていただくのだから、そのための交通費等が生じるのは当然ですが、マロニエ君がいいたいのは通常の場合で、ごく近い距離であっても調律料金に出張料を一律上乗せする場合があることです。
とくに驚くのはメーカーから直接出向いてくる調律師さんにそれが多いということで、これは大いに疑問を感じるところです。
(マロニエ君の経験では出張料金を請求されない方のほうが多いですが。)

というのは、管弦楽器のように持ち運びができる楽器なら、自らメンテに持ち込むことが可能ですが、ピアノはそもそもオーナーがどうあがいても持ち運びどころか動かすことさえできない特殊な楽器なので、ピアノ調律という仕事=技術者は移動するというのが大前提であるはずです。
つまり技術者が移動しないことには仕事自体が成立しないわけで、そんな職種であるにもかかわらず、いちいち出張料金を請求するというのは社会通念としていかがなものかと思うわけです。

それをいうなら、こちらから動くわけには行かない仕事、例えば水道や電気の工事であるとか、植木の剪定など、これらの人達が出張料金などを請求することはまずないし、少なくともマロニエ君はされた記憶はありません。
とくにメーカー系あるいは正規代理店などが定めた料金体系に、この出張料がしばしば含まれることは甚だ説得力を欠いており、こういうこともユーザーがだんだん調律をしなくなる遠因になっているのではないかと思います。

かたやフリーの調律師さんの中には、ご自身が定めたエリア内で仕事を引き受けた以上、当日の調律時はもちろん、後日発生した微調整などなんらかのやり直しなども含むすべての再訪にも決して出張料金をとらないという、毅然としたスタンスを貫く方もおられることも声を大にして言っておきたいところで、メーカー系列の料金体系のほうがよほど努力不足でもあるし説得力のない請求をしていると感じます。