イヤな光景

イヤな光景を目にしました。
先日の平日夜9時過ぎのこと、ショッピングモールに買い物に行って、本屋に立ち寄った時のことでした。
雑誌を立ち読みしていたら、わずか3メートルぐらい先になんだかちょっと違和感を感じました。

人同士がペタッとくっつき合ってほとんど声も出さずにしきりになにかに集中しているようで、どうも小学校高学年~中学生ぐらいのまだ背が伸びきっていないひょろっとした女の子と、ほぼ間違いなくその両親と思われる3人。

女の子を中心に、両親と思われる2人が女の子に対して直角に夫婦が向き合うようにして肩が触れ合わんばかりに立っており、要するにこの3人は上から見ればコの字型を作っていました。
母子はなにかヒソヒソ言っているけれど、お父さんらしき人は終始無言。
女の子の手にはスマホがあり、カシャッ、カシャッ…とカメラのシャッター音がこちらまで聞こえてきます。

何をしているのだろうとつい見ていると、お母さんらしき人が手に本を持ち、娘がそれを写すたびに手早くページをめくるという連携プレイであることがわかりました。
左右を固める両親に守られながら、女の子は無表情にひたすらシャッターを押し続け、おおよその印象だけれど10ページぐらい撮影した感じでした。
両親は、本来とは違う意味でのまさに保護者であり協力者、いや悪行の仲間というべきか。

それが終わると固まっていた3人はサッとばらけて、本を持っていたお母さんにいたっては、その本を平積みの棚にポンと軽く放り投げるように置きながら、もう用は済んだとばかりにその場を後にしました。

売り物の本を買わず、必要なページだけを撮影していることは明白だったので、こちらもついイヤな気分になって、こっちに向かってくる3人の顔を遠慮なく正視してやりました。
娘とお父さんはややうつむき加減で通り過ぎましたが、お母さんはマロニエ君の視線に気づいたけれど、一切表情を変えることはなく、普通の声でどうでもいいような雑談をしながらこちらの横の通路を通り過ぎて行きました。

そこは、参考書のコーナーらしく、遠目に「英語」という文字は見えましたが、どんなものかわざわざ近づいて確認する気にもなれませんでした。

でも、本屋の商品である本の中をスマホで撮影するというのは、いわば「情報の万引き」です。
そんな不正行為そのものもむろんどうかとは思うけれど、そんなことを両親が我が子にやらせる、あるいは子供がそうするといったのならそれをせっせと手伝うというのは、激しく不愉快な気持ちになりました。

しかもいかにもそんなことをしそうな感じはなく、どこにでもいそうな普通の善良な市民といった感じの3人であったことが、よけいやっていることとのギャップがあって凄みを感じました。

思春期という最も多感な時期に、子供にそんな犯罪に近いようなことを平然とやらせる両親。
そんな調子では、まともな教育もしつけもあったものではないし、その子がどんなずるい手を使ってでも、自分の目先の利益を追い求めるようなことをしても、なんの抵抗感もないような人間になってしまうのは当然だろうなと思いました。

スマホのカメラもきっと画素数も多くて、拡大にも十分堪える写真が取れるのだろうし、まさに便利で高性能な機械も使い方次第というところ。
昔なら007に出てくる産業スパイのような行為でした。