中古CDの当たり外れは、困ったことにちょっと病みつきになってきたかもしれません。
もともとが、ダメモトでやっていることなので、失敗してもさほどの痛手ではないのですが、それでもみみっちいドキドキ感はあるのです。
前回までの経験として、あまりの激安はやはりゴミになる確率が高いので、そのへんはより注意することに。
△【アルバン・ベルク弦楽四重奏団のモーツァルト】
思い込みかもしれないけれど、モーツァルトの弦楽五重奏曲といえばあのg-moll KV516のような不朽の名作があるにもかかわらず、意外にもこれといったCDがあるようでない印象。アルバン・ベルク弦楽四重奏団は、1980年代ぐらいからかずいぶん流行った時期があり、マロニエ君もその波にのせられてベートーヴェンの全集など買い揃えたりしたが、技巧的で見事だが、今の耳で聞くとやけに力んでいるようで、そこがいささか古臭くもあり、心から作品の躍動を楽しめるというのとはちょっと雰囲気が違った気がする。五重奏なので、ヴィオラをもう一人加えたもので、この時代特有のやや固く叙情を排した印象だが、とりあえず演奏自体がしっかりしているので聴くには値する。ただし、これでこの作品の核心に触れられるかというといささか疑問が残る。モーツァルトの弦楽五重奏曲でとくに第3番/第4番というのは、何十年来耳にしているから、いかに傑作といえども、そう何度も繰り返して聴く気になれないのが残念。
☓【グールドのリパフォーマンス】
2006年の発売当初からかなり話題だったがどうしても気乗りがせずに買わなかったCD。いわゆる現代のコンピュータ制御による精巧な自動演奏を用いて、1955年のゴルトベルク変奏曲をヤマハのコンサートグランドで再現録音したもの。マロニエ君はそもそも自動ピアノというものが、演奏者と楽器の関係なしに成り立つものである以上、まったく興味がわかないし、それは現代のハイテクをもってしても覆ることはないことを確認することになった。解説文にはこのシステムがいかに優れたものであるかということが縷縷述べられてはいるが、要するに、聴いてみて、まったくの技術屋の機械遊び以外のなにものでもないと思った。タッチは浅く骨抜き、なにより気が入っておらず、うわべだけの霞みたいな演奏は、新録音であろうとサラウンドなんたらであろうと無意味。耐えられずにオリジナルのモノラル録音を鳴らしてみると、いっぺんに目の前が明るくなるような爽快さがあった。モノラルで結構、マロニエ君にとっては精神衛生にもよろしくない1枚。
❍【ドラティのバルトーク】
どんなに音楽が好きでも、あまり馴染みのないまま来てしまった名曲というのは人それぞれあるもので、マロニエ君にとって、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」と「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」がまさにそれ。つかみどころのない難解な作品のイメージがあったけれど、いざ腰を据えて聴いてみるとまったくそんなことはなく、わりにすんなり馴染むことができたし、なかなかおもしろい作品でかなりの回数を繰り返し聴くことになった。上記のモーツァルトで述べたように、聴き始めの頃だけにある新鮮さというのは、回を重ね時を経るうちにしだいに失われていくのは如何ともしがたいが、そういう意味でも大いに楽しむことができた。いずれも大変な力作で、良いオーケストラの演奏会で聴くには好ましいだろう作品。そもそもマロニエ君は、マーラーやブルックナーに多くあるように、長大な管弦楽のための作品で、曲の出だしが聞こえにくいような感じで開始されるのが、やたら思わせぶりで泥臭く思ってしまうところがある。
❍【ジョシュ・ガラステギのバレエレッスン用CD】
スペイン出身のピアニストらしいが、マロニエ君はまったく知らなかった人。後でネットで検索すると、バレエのレッスン現場ではバリシニコフの時代からこの分野で有名なピアニストだったらしい。曲はバッハからチャイコフスキー、スペイン物まで有名な曲をバレエスタジオでの練習用に編曲したもので、音楽として鑑賞するものではないけれど、マニア的にはなかなか面白いCDだった。なにより印象的だったのは、一切の記載はないけれど、きめ細やか(これは稀有なこと)でしかも朗々とよく鳴る理想的なニューヨークスタインウェイの音が聴けるという点。個人的な印象で云うと、製品ムラというか平均的なクオリティでいうと圧倒的にハンブルク製だと思うが、ごくたまにある当たりのニューヨークの中にはとてつもない逸品があるようで、まさにその音を聴けるだけでも購入した甲斐があったというもの。ちなみにこれ280円だったけれど、ネット上ではなんと4700円というのにはびっくり。
☓【カテリーナ・ヴァレンテ】
この人のことを知らないマロニエ君は、昔のフォーマルな装いの写真からしててっきりクラシックの歌手だた思い込み、閉店間際、4枚組で500円ということもあってついでに購入。はたして音を出してみると古き良き時代のポピュラーで、いわゆるヨーロッパの歌謡曲だった。自分の無知が招いたことだし、クラシックの棚にあったのも要因。ま、たまに車中などでガラッと気分を変えるのにいいかも。