歯みがき

早いもので4月となり、平成の御世もあとひと月ですね。

奥歯が少ししみるので、2年ぶりぐらいに歯医者さんに行きました。
ここは治療というか施術というか、ようするに仕事がとても丁寧で、これまでに被せ物などをしても、一度も違和感などを感じたことがなく、治療のための治療は一切せず、人にも自信をもっておすすめできる歯医者さん。

毎度のことながら、歯磨きの大切さを教わり、さらに磨き方をいまさらのようにこまかく教えていただき、決意を新たにしているところですので、少しご紹介を。

まず驚くのは、ブラッシングに際しては、歯磨き粉には一切頼るなという考え方。
以前もこの先生は「私達は、歯磨き粉のチューブ1本使うのに半年ぐらいかかりますよ」といわれたので、またまた大げさな!と思って聞き流していましたが、どうやら本当のようでした。

スーパーや薬局に行くと、いろいろな歯磨き粉がズラリと並んでいて、中にはずいぶん高価で医薬品のような効能を謳っているものなどありますが、何度か使ったこともあるものの効果がよくわからず、いらい、また元に戻って、マロニエ君が使っているのは、だいたい500円前後のもの。

ところがこの歯医者さんがいわれるには、歯磨き粉そのものでどうこうということは、ほとんどないと考えてよろしいとのこと。
むしろ歯磨きで重要なのは、使うブラシと丁寧な磨き方がほとんど全てで、歯磨き粉はただの快感と自己満足のためであり、使わないなら使わないでも一向に構わないとのこと。
つまり、一般で言うところの「石鹸なし/水洗い」でよいというわけです。

大事なことは、先の細いブラシを使って、力を入れずやさしく一本ずつぐらいの気持ちで丁寧にブラッシングすることだそうです。
さらに歯間ブラシを使って歯と歯の間に異物を残さないこと。

難しいのは、「力を入れない」ことで、歯磨きは昔の雑な習慣で、ついゴシゴシやりたくなってしまいますが、それは歯茎を痛めるだけで何一つメリットはなく厳に慎むべしとのこと。
力をかけすぎると、歯茎が傷ついたり下がったりで、知覚過敏や歯槽膿漏の原因になるなどいいことはひとつもなく、そもそも力で歯や口の中をきれいにしようというのがまったくの間違いですね。

試しに先生が歯ブラシを手の甲に当てて「これぐらいの力加減」というのをやられましたが、本当にふわふわっと毛先が優しく当たる程度。

だいたい「歯磨き」という言葉がいけないのではないかと思います。
歯磨きというと、文字通り歯の表面を磨いてピカピカにするイメージですが、肝心なことは歯と歯の間、あるいは歯と歯茎の境目に付着した汚れや異物をていねいに取り除くことであって、これは精密なお掃除だと思います。
しかも、歯は硬いけれど、歯茎はとても傷つきやすい皮膚だということを忘れがちで、結果、歯茎をかなりいたぶっているんですね。

「歯磨き粉はなくてもいいもの」という認識があまり広まると、そちらのビジネスにも支障があるからかほとんど浸透していないのかもしれませんが、なるほど歯磨き粉は大した役割を果たしているわけではないことが実感できてきました。

というわけで、歯磨き粉なしで何度かやってみましたが、…気分的にこれはさすがにダメでした。
いっさい泡がないという感触は、まるで張り合いがないというか、気持ちよさがまったくないというか、ここはやはり先生の言われるように自己満足のために、これまでよりぐっと少量でいいからつけてみると、それでちょうどいいことがわかりました。

歯ブラシを手にするや、ついできるだけ短時間で、一気呵成にガーッと歯磨きをしたい人は昔は多かったと思いますが、いったんそれを捨て去って、たとえば…ピアノできれいな弱音を出すような気持ちでやってみると、ああそういうことか!と思えるようになるもんですね。

はじめの何度かは違和感が先に立ちますが、すぐに慣れてきて、正しい歯磨きが楽しくなりますよ。