長年こんなブログをやっていると、思いがけないメールを頂くことがあります。
ピアノ購入にまつわるお悩みや、何らかのアドバイスを求める内容だったりといろいろですが、もとよりマロニエ君は一介のアマチュアに過ぎず、まともにお答えするような資格もなければ責任ももてません。
また、ピアノには好みや主観が介在する部分も少なくないので、一概にこれが正しいとは言いかねることも多く、答えも一つでないことがたくさんあります(もちろん明らかに☓ということはありますが)。
例えば、猛練習に耐えて音大受験やコンクールに出る人が必要とするピアノと、趣味で好きな音楽を奏でてその音色を楽しみ心の癒やしにしたいというような人では、ピアノに対する要求やイメージも違うでしょう。
なので、あくまでも「自分だったらどうするか」というレベルで雑談的に返信させていただくだけですが、それでもご参考の一助になれば幸いと思っています。
そんな中で、最近ちょっと驚くような事があったので、ご当人の了解を得て少しご紹介。
その方のことをAさんとしておきます。
Aさんは某メーカーのグランドピアノを新品で購入され、その音にはとても満足されているものの、タッチが重くて弾きにくいのでこれをなんとかしたいというご相談のメールでした。
マロニエ君は約2年ほど前、それとまったく同じモデルの新品に触れる機会がありましたが、たしかにタッチは重くしかも雑で、ほどなく納品するというのに驚いたのですが、さらにその数カ月後、とある地方のピアノ店でまたしても同じモデル(こちらも新品)がありましたが、これが同じピアノとは俄には信じられないほどしなやかで上質なタッチで、音は腰がすわりビシッとキマっていて、こんなこともあるのかと二度びっくりでした。
この差は、志ある技術者さんによる高度な調整の賜物であることは明白で、ピアノを生かすも殺すも調整しだい技術者しだいということを痛感させられました。
で、返信内容としては、いきなり鉛調整ではなく、まずは信頼できる技術者さんによって入念な点検と調整をやってみて、それでもダメでやむを得ない場合は、鉛調整などの段階に進まれるのがいいのでは?と書きました。
ところが、Aさんもいろいろ調べておられたようで、ある技術者のサイトに辿り着かれ、そこに書かれたタッチ改善策に強く興味を示されたようでした。
その内容と地域などから、もしや某氏では?というのが頭をかすめたのでAさんに尋ねてみると、やはりそうでした。
(マロニエ君はエリアも違いますが、知人が一度依頼しており、印象はすこぶる芳しくないもので、具体的なことは避けますが「二度と頼まない!」ということでした)
某氏への依頼は止したほうがいいのでは?と伝えましたが、サイト内で展開されるその尤もらしい記述にかなり期待をされておられるご様子で、こちらの助言もはじめはなかなか届きませんでした。
その後の報告で、なにより驚いたのはその費用で、タッチ調整だけで、中古の安いアップライトが一台買えそうなすさまじい金額に唖然とさせられ、しかもそれはAさんのピアノを一度も見ることも触ることもせずに伝えられたようです。
その後、Aさんが質問などのメールをされると、今度は逆ギレのような攻撃的な長文メールが送られてくる始末で、そこに書かれているのは、Aさんのピアノに対する誤認をさんざんなじったあげく、自分の書いた文章を10回は繰り返して熟読しろと記されていたのは我が目を疑いました。
これは関東地区での話ですが、この競争社会の中ではときどきある悪しきパターンのような気も。
一方的な主張を展開し、自分はプライドの高い本物の職人で、徹底して強気に出ることは自信の裏付けがあるかのごとく振る舞い、ともすれば埋もれがちな大都会で生き抜く手段として棲息するタイプ。
まるでドラマにでも出てきそうな気難しい職人気質…の模倣ですね。
でも、模倣は模倣ゆえ、ともすればやり過ぎるもので、どんどん過激になっていく。
気に入らない客には「帰れ!」と怒鳴る頑固オヤジのラーメン屋でもあるまいに…と言いたいところですが、ラーメンならせいぜい千円かそこらでしょうけど、この場合はその何百倍の値段ですから笑って済ませるわけにもいきません。
そもそもマロニエ君の見るところでは、どんな世界でも、自信がある人ほど穏やかで幅があり、それのない人に限っていたずらに強気の態度に出るもの。ピアノの技術者の方でも一流になればなるほど、おだやかで、謙虚で、お人柄もよく、相手の要望にもしっかり耳を傾けながら素晴らしい仕事をされるもの。
むろん法外な請求などもありません。
請求といえば極め付きは、一方的に○日○曜日までと期限を切って、それを過ぎてキャンセルした場合、全額の70%を請求するというものでした。その理由は、そのために空けておいたスケジュールに穴が開くというのが言い分らしいのですが、これはたった数日間の話で、そもそも何も予定などなかったとしか思えません。
結局Aさんは、先述のピアノ店に連絡された結果、出張ができない代わりに信頼できる技術者さんを紹介されたとかで、某氏のほうは「期限」の直前でキャンセルされたそうで、マロニエ君としても安心しました。
近年、ピアノの出荷調整が著しく省略されている由で、少しでもいいものを届けようという志を失い、ひたすらコストのことしか考えないメーカーの方針もまた、このような悪辣なビジネスを生み出す要因にもなっているような気がします。
ピアノに限らず、やたら高額な費用や一方的な主張を押し付けてくるのは、まず怪しいと思っておいたほうがいいようです。
くれぐれもご注意ください!