危ない世界

いまどきはネットを使った個人売買が盛んで、その代表格といえばヤフオクでしょうが、それ以外もいろいろあって、中には名前は有名でも信頼度がイマイチで、トラブルが頻発する怪しげなものもあるようです。

ごく最近、親しくさせていただいている知人からリアルタイムで聞いて呆れ果てた話ですが、知る人ぞ知る手作りの某日本製グランドピアノ(しかも塗装まで含めたオーバーホール済み)が安く出てきたので、出品された翌日、それを購入すべく出品者と連絡を取られたとか。
すると、すでに試弾を希望をされている方というのがおられ、その人はもし気に入れば、提示された価格にさらに少し上乗せするというようなことを持ちかけているそうで、知人は購入希望を伝えたものの、その人の次になるという返答だったとか。

しかし、その内容はこのサイトの売買システムとは齟齬があり、そもそも話し合いで決するものではなく、単に質問などをするもので、購入に関しては、あくまで購入手続が優先されるもの。

そこで、まず押さえておきたいことは、この手の売買サイトには規約があり、ちょっと要点を抜粋しておきますと以下のとおり。
 

 利用規約
 第11条 (「売ります・あげます」カテゴリの取引)
 1.「売ります・あげます」カテゴリにおける出品者ユーザーと購入者ユーザーの売買契約は、購入者ユーザーが購入手続を完了した時点で、出品者ユーザーと購入者ユーザーとの間に成立するものとします。
 つまり、問い合わせの順番は関係なく、早く購入手続をしたものに優先権がある。

というもので、このサイトはオークションのように価格で競うものではないから、提示された金額でいち早く決済した人が購入できるもので、だからはじめから値段は決まっているのだし、この規約は至極当然のことと納得できるところです。

問い合わせがいくつも寄せられていることを知った知人は、遠方であるため試弾も諦め、早めの決断をして購入手続をするしか方法はないと考えたようで、意を決して購入手続へと進み「決済」まで完了したのだとか。
その勇気ある決断には驚くばかりですが、このピアノをゲットするにはそうするしかないという一択だったようです。
すると同日夕方、売買サイト事務局より「決済を確認した」とのメールも届いたそうで、あとは両者で受け渡しの相談などをするだけです。

売買はルールに基づいて正しく成立したわけですから、知人はさっそく出品者に連絡を取ったものの、なんとまったく連絡が途絶え、その後も何度か続けてメールをするも梨のつぶて状態となり、その日はついに一通も連絡がなかったというのですから、これには驚きを禁じえませんでした。
翌日になり、ようやく出品者から連絡があったところによると、なんと、一方的に「キャンセル」となって画面も消されてしまったらしく、これにはさらに驚きました。

出品者にしてみれば、提示額以上で購入するかもしれない試弾希望の方を待ちたかった、あるいは予想以上に問い合わせがあり金額的にも欲が出たのかもしれませんが、このサイトが定めたルールに何ひとつ違反することなく購入手続を進めた相手に対して、これはあきらかに身勝手で侮辱的なやり方だと思わざるをえません。

オークションのように入札価格によって競い合うものではないのだから、規約に従って「決済」まで完了したにもかかわらず、それでも尚、出品者が購入者を「選別している」ということには、強い違和感と憤りさえ感じました。
仮に「あげます」ということなら、多少は出品者が相手を選ぶということがあってもやむなしかと思われますが、数十万円という大きな金銭の動く売買で、ルール通りに購入手続(決済)をしたにもかかわらず、出品者の意向によってそれを一方的にキャンセルするというのは、あきらかな反則行為でしょう。
聞いているこちらまでムカムカと憤懣やるかたない思いにかられました。

この場合、まず出品者のエゴとルールに対する甘さが窺えます。
このようなネットの売買システムに出品した以上は、そのシステムに従うことは当たり前のこと。
いち早く決済した人(ルール違反などあればともかく)に粛々と売却するのが義務であり、そういう規約の遵守と理解がないのなら、そもそも出品する資格などないとマロニエ君は考えます。
知人は当然納得ができず、サイト事務局にこの顛末を報告したそうですが、あまりにそのようなことが多いためか、ほとんど相手にもされないということだそうで(そこがまた驚きですが)おそらくはその辺りも見越してのキャンセルだったのではと思われます。

ではその支払ったお金はどうなるのかというと、受け渡し完了までサイト運営会社の預かりとなるらしく、不成立の場合は返却されるということらしいので、戻っては来るようですが(当然ですけど)、だとしてもなんともいやな後味の残る話でした。
しかも現在はその掲載の後も残っていないところからすると、サイトの手数料を避けるため、情報ページは消去され、取引は直接取引で行われたものと思われます。
ご立派ですね。

そういえば、何年も前、車を売却しようと同じサイトに出品したところ、連絡を取ってきた人に散々試乗され、気を持たされ、翻弄された挙句、ついには立ち消えになってしまった苦い経験がありました。
ネットの評判を見ると「このサイトは民度が低い」という辛辣な一文があり、なるほどと納得しました。

その点では、ヤフオクは手数料は少々高いけれど、いろいろな点で格段にしっかりしたものだと思います。

【追記】このブログに目を通した当事者の知人から「一部、事実と異なる点がある」という指摘がありました。それによると、知人が連絡した時点で、一足先に試弾希望が入っていたのは間違いないけれど、それとはまた別の人が「ぜひ買いたい。気に入れば◯万円上乗せする」という申し出をされたらしく、それは「知人の連絡よりも後のこと」だから、価格で追い越されたわけで、そこがよけい納得できない気になり、ならばというわけで、一気に購入手続(決済)に至ったということでした。
本人いわく「その人よりも、さらに高額の上乗せを提示すれば買えたのかもしれないけど…」と言われていましたが、それではまるでオークションですよね。要するに、売り主は売買サイトのルールそっちのけで、決済した人をキャンセルにしてでも、少しでも高く買うという人のほうを選んだということでしょう。
もちろん、売る側としては少しでも高くという気持ちはわからないでもありませんが、だったらはじめからヤフオクにでも出品すべきだったと思います。