ショパン・コンクールの3次が終わり、決勝への日本人出場者も決定したようです。
反田さん小林愛美さんのお二人はまあそうかな…というものだったし、外国人については、あれこれいうほどつぶさに見ていないので詳しくはわからないけれど、何度か見た人に関してはほぼそんなもんだろうと思うもので、いまのところとくに異論は感じない、妥当な結果じゃないかと思います。
ポーランドのヤコブ・コシュリク氏は入っているし、前回末尾に書いた「中国系カナダ人」とは、JJ Jun Li Buiという人で、顔立ちが東洋系であることとLiという文字が入っていることで勝手に中国系だろうと思っただけで、もしかしたら韓国系かもしれませんが、いずれにしろ、それは大して重要なことではないですね。
名前の読み方もよくわからないし、何かでチラッと見たのはダン・タイ・ソンのお弟子さんでわずか17歳とのことですが、曲のツボを外さない演奏は、なるほどね…と思いました。
この人はずっとカワイを弾いていましたが、決勝でもそのままカワイでいくのか、ピアノを替えるのか?
ピアニストというのはある程度出来上がると、あとはそうそう成長はしないものですが、17歳ならこの先数年はまだスケール感が広がる伸びしろは充分ありそうです。
YouTubeには、動画配信の他に、コンクール関連の解説風のものが無数にあって皆さんの熱心さにはびっくりですが、今どきらしいというか、多くの動画で語られるのはあれもこれも褒めちぎりで、要するに何が言いたいのかちっともわからないものばかり。
コンテスタントやそのファンに気を遣っているのか、下手なことを言って予想が外れたら恥をかくという用心なのか、そのあたりよくわかりませんが、ま、それは余談です。
マロニエ君は、別に予想して当ててやろうと言うような気持ちなんてまるでないし、またこのコンクール関連に限らず、すべて自分が感じたことをひたすら正直に書いているだけで、それが結果に反しようが、予想が外れようが、大方の意見とは相容れないものだろうが、そんなことは一向にかまわないし、そういうことに斟酌したり安全を踏んでおこうなどとするつもりも毛頭ありません。
これだけはこのブログの一貫したスタンスですので、念のため。
ところで、決勝進出枠が10人だったものが12人に拡大されたんだそうで、これはちょっと増やし過ぎじゃないの?というのが率直な印象でしたが、そのぶん敗者復活の可能性も広がるのかもしれないし、ポーランドの国家をあげての大イベントが少しでも長く続くための方策なのかな?などとあれこれ想像は尽きません。
以前はオーケストラと共演できるのは6人でしたから、2倍になったというわけですね。
ただ、決勝は協奏曲の1番か2番かのいずれかで、圧倒的に1番を弾く人が多いから、いかにあの魅力的な名曲といえども、そうそう何回もあの「シ、ミーレミーソ、シ、シ、シ…」を繰り返して聴かされたんではたまらない気もします。
もう、この際だから、決勝でも演奏曲目を増やしたらどうかと思います。
「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」と「ドン・ジョバンニの変奏曲」はソロでも弾いている人がいたから、たとえば「ポーランド民謡による幻想曲」と「クラコヴィアク」をセットで演奏しても良い、というのはどうかと思ったり。
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少し戻って、3次の演奏を視聴しましたが、反田恭平さんはなかなか見事で、黒光りのするような凄みもありました。
テクニック、風格、細部に至るまでの磨き込みなど、完全に頭一つ出ているように思ったし、ピアノも楽々と太く鳴っているし、コントロールも思いのまま、なにもかもがワンランク次元が違うなと感じました。
小林愛実さんは、全体に注意深さが行き過ぎた感じで、前に「端正で気品すら感じる」というようなことを書きましたが、上半身を動かさない修行みたいで、さすがにちょっとやりすぎじゃないか…という感じも受けました。
おまけに、24の前奏曲では曲数も多いのに、曲ごとにそのつどしっかり区切って整えてからようやく次に進んでいくというのが、この作品にふさわしい弾き方なのか?と疑問でした。
個人的には、この作品にはもう少し各曲のキャラクターの対比や即興性、さらにいうなら全体で一つの曲のかたまりという雰囲気もほしく、あまりにひとつひとつを慎重に片付けていく様子に疲れてきましたが、やはり演奏家という立場の人は、聴く人を疲労させてはいけないのではないか?と思います。
YouTubeというのはありがたいもので、何度でも繰り返して任意に楽しむことができますが、小林さんと反田さんは共にスタインウェイの479を弾いていますが、出てくる音の違いには愕然とするばかりです。
とくに重量感や腰の座った鳴らし方では、飛行機でいうと737と777ぐらいの違いがあり、小柄な方というのはハンディがあって、そこは如何ともし難いものがあるように思います。
意外だったのは、演奏後のインタビューで反田さんは「やりたいことができなかった、あとで号泣した」なんていう意外な発言があるかと思えば、小林さんはあんなにも用心深い演奏だったにもかかわらず「1次、2次と楽しめなかったものが、3次で初めて音楽を楽しめた」と仰るあたり、なにがなんだかさっぱりわかりませんでした。
穿って見れば小林さんは、ソロが終わっての釈明のようにも聞こえるし、反田さんは大逆転を見据えた布石のようにも思えなくもないですが、まあ、そこをあまり深くつついても意味ないことで、決勝の演奏そのものに注目すべきですね。
今日は、ショパンの命日だったんですね。