駐車の向き

前回書ききれなかったことで、駐車場でも「えっ?」というようなことがあったで、追記を。
今回の接種会場であるクルーズセンターは、文字通りクルーズ船寄港を受け入れるための施設なので、大きな駐車場の白線の区割りは観光バス用のサイズになっており、普通車には長さも幅もてんで合いません。

駐車場にあてられたのは、要は大型送迎バスの待機場所のようなもので、だから普通車にとっては地面がアスファルトというだけの、ただの広い空き地のようなもの。
GoogleMapの航空写真で確認すると、大型バスが50台くらい止められる広さです。

すでに止まっているクルマ数台も建物入口に近いほうに適当な間隔でパラパラっと置かれていましたが、駐車場の入口から数人の誘導員がいて、こんなに広いのになぜか自由な場所に止められそうにはありません。
誘導員の指示で手招きされるまま奥に進み、ここへと示された場所へ前向きに止めると、すかさず横に近づいてきたので窓をあけると「バックでお願いします!」とやり直しを命じられたわけです。
えっ、なんで?

何度も繰り返しますが、はじめ場所を間違えたのかと思うほどガラガラで、そんな状況でどこに停めようと、どうでもいいような環境で、わけても止め方が前向きだろうが後ろ向きだろうが何の意味もない状況。
それなのに、一度置いたものをわざわざ向きを180°回転させて止め直しをさせるというのはいったい何なのか、どう考えても合理的な理由が見つかりません。
ただヒマだから意味のない指示をして、人を従わせて楽しんでいるようにしか思えません。
あるいはこの係員には「駐車はバックで」という思い込みがあって、そこに前進で止める車があると、それは異端として目に映り、個人的な情緒を乱されたということなのか。

駐車の向きというのは、塀や壁を排ガスで汚さないなど、ワケがあって向きを指定して置かせる場合もないではないけれど、ここでは車の数に対してあまりに広すぎる駐車場で、駐車枠もなく、やり直しを命じてまでバックで止めさせる必要はどこを見渡してもまるでわからないし、その後ろにはフェンスがあって、一本の道があって、さらに向こうには冬の寒い海があるだけ。

そもそも普通車なら100台以上は置けそうなところに、車はわずか5〜6台しかいないのに、この人達はいったい何がしたいのか、マロニエ君は性格的にこういう馬鹿げたことを言われるまま従うということが、普通の人以上に苦痛に感じる性格かもしれません。

ついでながら、日本人は駐車というと「バックで止めるもの」という固定観念というか、それがまるで「駐車の作法」であるかのように思っている人って相当多いと思います。

理由はいくつか考えられますが、たとえば狭い駐車場にキチンと止めるにはバックで置いたほうが、置き方も慎重になるし、物理的にも方向蛇(左右に動くタイヤ)が後であるほうが狭い場所では効率よく置くことが可能というのはわかります。
また、多くの駐車場には車止めがあって、そこにタイヤが当たると、前後のオーバーハングの関係から、車種によっては車の後部がやや飛び出すということもあるけれど、それはあくまで車種によって逆もあるから普遍的な問題ではない。
(ちなみにクルーズセンターのこの広場には車止めなんてまったくありません、念のため)

それよりもマロニエ君が感じていることは、こう言っては申し訳ないけれど、運転の下手な人にとっては駐車は苦手な事の一つで、教習所時代から「駐車はバックで」と刷り込まれて練習し、駐車といえば疑いもなくバックで止めるということが習慣化しているのでは?とも思います。
そのほうが出るときに楽という考えもあるでしょうが、これって難しいことを先に済ませておきましょうという程度のことでしかない。

むしろ前向きに止めて、出庫時にバックで出るほうが、駐車枠内に置くように狙いを定める必要がなく(つまり適当でよく)、要は車がスペースから出られさえすればそれでいいわけだから、このほうが楽でもあるので、どちらが良いかは駐車環境にもより、臨機応変に考えれば良いこと。
単純な話、バックで左右の車に注意しながら枠内へ左右均等に、かつ平行にキチッと収めるより、前向きにスパッと止めたほうがよほど楽なことも多いのですが、たったこれだけのことがこの国ではなかなか理解されない。

近頃の駐車場というのは不気味なほどだれもかれもがバックで駐車しており、なんだか不気味です。

新しい車には駐車アシストのような機能もあるから、ますますバックでの駐車は常識になるのかもしれませんが、とにもかくにもやみくもに「駐車はバックで」という暗黙のルールが染み込んでいるのは間違いない。
ここには日本人お得意の横並び精神も加勢して、みんながバックで止めているからそうしなくちゃいけない、ひいてはバック駐車はキチンとした止め方、前進駐車は行儀の悪い止め方というような気分もあるのかもしれないと思うと、なんだかゾッとします。

だからかどうかは知らないけれど、先のクルーズセンターのように、だだっ広いガラガラの環境でも、一旦置いたものをわざわざ逆向きに置き直しをさせるというのは、当方が「行儀の悪い止め方をした」と思われた可能性もあるのかと思うと、勘違い&邪道も甚だしく、今風に言うと「パワハラ」ではないのか。

実はこの状況、昔だったら「なんのためにバックで止めなくてはいけないのか?」「そうすることにどういう意味があるんですか?」とすかさず問い正すところですが、近頃ではなんでも従っておいたほうが面倒臭くないとか、どうせ納得できるようなアンサーは得られない、さらには普通に質問をしても逆にクレーマーのような変人のレッテルを貼られるのがオチで、正義正論よりも自分の身を守ること、ストレスを避けることを優先するようになり、甚だ不本意な習慣が身についているので黙って従いましたが、今思えば、やはりなぜか?という質問ぐらいはしておくべきだったと後悔しています。

こんなブログにまでくどくどと書くということは、結局はストレス回避はできていないということですからね。