イタリアのBECHSTEIN

インターネットのおかげで、こんなブログを海外で読んでくださる奇特な方がおられて、ときどきメールのやり取りがあったりします。

今回はイタリアにお住まいのTさんのお話。
ひと月ほど前に他所からローマへ引っ越しされたそうで、以前からエラールやプレイエルについてもいろいろな現地情報を聞かせていただいていました。
Tさんは、メールから受ける印象では良い音/本物の音のわかる方で、いまやコスパNo.1として世界中に行き渡っている日本製の大量生産ピアノにはご興味がなく、熟練の職人が相応しい材料を使って作り上げた、佳き時代の奥深いものをもったピアノに惹かれておられるようです。

ただ、ピアノは引っ越しの際の足枷となるので、これまではレンタルピアノなどを利用しておられたようですが、このたびいよいよ購入を検討されるとのことで、今回、そのご相談も兼ねてメールをいただきました。

当たりをつけておられたのは古いベヒシュタインのグランドで、正確な製造年はまだはっきりとはわからないようですが、20世紀初頭に作られたもののようで、写真を見た感じはどうやらCのようで、奥行きは220cm(あるいはそれ以上)ぐらいではないかと思われます。

さて、数枚送ってくださった写真を見る限り、ほどよく使い込まれた感じを残した好ましいもので、第一印象として素晴らしい!と思いました。
私見ですが、いくら佳き時代のものといっても、あまりにボロボロで汚いものはさすがに気が滅入って嫌ですが、かといって古いピアノにこれでもかというリニューアルが施され、隅々まで新品のようにビカビカに仕上げられたものはきれいではあるけれども、なんとなく胡散臭さみたいなものが漂い、ある種の下品さを感じてしまいますが、価格はべらぼうに高いし、いずれにしろ好みではありません。

その点、このベヒシュタインはまことにちょうどいい感じに見えました。現物はイタリアのとある地方にあるのだそうで、近いうちに見に行かれるご予定とのこと。
フレームの穴の周りには大仏様の頭のようにイボイボがあって風格満点、響板も状態は良好とのことだそうです。
所有者とやりとりされているということなので、個人売買なのかもしれませんが、そのお値段はなんと、4500€だそうで、現在のレート換算しても約65万円ぐらい。
何かの間違いでは?!と思うほどで、もし日本ならゼロがひとつ違っても不思議じゃないと思われ、ともかくも驚きました。

もちろん、現物を見て、触って、音を聴いてみなくてはわからないけれど、いずれにしろ信じられないようなお値段であることに間違いないでしょう。
このピアノが特別なのか、ヨーロッパの古いピアノの相場とはそんなものなのか、そのあたりはわかりませんが、日本の中古ピアノ(とくにグランドや輸入物)というのは、なぜあんなに高いのかと思います。

つい先日、夜7時のNHKニュースの後の番組でやっていましたが、現在日本国内の不動産価格は世界から見ると驚くばかりに安いのだそうで、「まるでバーゲンセールのように海外から買われている」と少し警告的な調子で言っていましたが、ピアノは逆のようで、なにがどうなっているのか…まるでわかりません。

そもそも価値ある古いピアノの適正価格がどれぐらいのものかわからないけれど、このベヒシュタインが約65万円というのは、Tさんも「信じられない値段」と言われており、これがヴァイオリンぐらいのサイズならなんとか金策して、買って送っていただきたいぐらいです。

現物の写真です。上手い具合にTさんのお手許にやってくるよう祈っています。

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