ロシアによるウクライナ侵攻の影響か、コロナその他の要因の絡む世界的な傾向か、確かなことはわかりませんが、このところの物価の上昇には驚きと諦めがないまぜになっています。
ピアノもその例外ではないようで、ひさびさにYouTubeを見ていると、スタインウェイを買うと決めた人が購入までの顛末を追った動画があり、あちこちの店で試弾しては「あっちが良かった、こっちはどうの、はじめの店にまた行ってみる、するとある店から電話があって新情報があった」などと、どの一台を購入するかに至る動画がアップされており、それを面白く見ていました。
最終的にはB型の新品を買われることになったようで、これという一台に巡り合われたことはなによりなのですが、その購入のためには資金の問題があり、ついには別目的だった貯蓄も崩してということで、やはりこれがほしい!これに惚れ込んだ!という心の昂ぶりに圧倒されると同時に、私もどちらかと言うとそういうタイプで、きちんと目的をもって蓄えなどできない性格なので「わかるなぁ!」という気分で見ていました。
が、そこでポロッと明かされた価格に驚愕!
いまやハンブルク・スタインウェイのB型の新品は約2000万!もするんだそうで、これにはさすがに背筋が凍りました。
スタインウェイをはじめ、輸入ピアノが毎年少しずつ値上げをするというのはもはやこの業界の慣例のようですが、そこには社会情勢も物価も無関係に、毎年機械的にサッと値上げするという感覚はちょっと馴染めません。
しかも、値上げすると、その価格をベースに数%値上げされるのですから、おそらくは年ごとの値上がり幅も肥大していくのは明らかです。
高級輸入ピアノを買うような一部のリッチな人達には、そんなことは大した問題ではないとでも言わんばかりですが、しかし楽器というものはそれを弾く人は必ずしもリッチ層ではなく、それを必要とするだけの訓練や人生の目的なども絡んでいることで、ただのステータスシンボルで高級品を買うのとはちょっと違った要素もあるように私個人は思うのですが、きっとメーカーは利益追求でそういう考えではないのかもしれず、なんだかやりきれないものがありました。
私もずいぶん前に分不相応とは知りつつ無理をしてこの手のピアノを購入しましたが、今だったら絶対に無理だと思うと、正直ホッとするところもないといえばウソになるかもしれませんが、とはいえ…株でもあるまいし、手放しでは喜べないものが喉元に引っかかってしまうのも事実です。
すでに書いていることなのであえて書きますが、自室用にベヒシュタインのMillenium 116Kという小さなアップライトを3年半前に購入しましたが、それも気になって現在の価格を調べてみると、当方購入時に比べてなんと1.4倍近い値上がりとなっており、その凄まじさに驚きました。
ちょっとどうかしているんじゃないの?と思います。
ベヒシュタインの場合、レジデンス/コンサートという本来のシリーズの下に、同ブランドながらアカデミーシリーズという廉価シリーズがありますが、いまやそちらのアップライト(ほぼ同サイズ)のほうが私が購入した時より高額となり、呆気にとられました。
長年、物価の優等生と言われた卵でさえも、近ごろはずいぶん高くなっていますから、このご時世では不思議はないんだと見る向きもあるのかもしれませんが、現在の値上げには不健全さが臭っていて、経済的にも生きにくい時代になっているのは間違いないようです。
まして、TVのニュースやドキュメントなどを見ても世界のきな臭い話題にあふれ、加えてエネルギー不足、さらには深刻な食糧不足なども予見されており、この先どうなるのかと思うと暗澹たる気分になるばかり。
これからは、ごく当たり前だと思っていたことでも、そうではなくなるような厳しい時代が待っているかも…というような気がかりが常に頭の片隅から離れなくなるんでしょうね。