新しい楽しみ

ネット配信による映画やドラマを見て楽しむことがいつごろ始まったのか、まるでわかりません。
かなり前だったんだろうとは思いますが、そういうことにめっぽう弱く、どうにもなじめない私は正直関心もなかったし、そのまま長い時間が過ぎてしまいました。
そもそもパソコンやスマホで映画を見るなんて、考えただけでも自分の感性には合わないと直感していました。

ところが既にこの手の配信サービスに加入し楽しんでいる人から「どうして入らないの?」という、まるで何年も前にガラケーをだらだら使っていた私に「なんでスマホにしないの?」と言われた時と同じような、それをしないことになんら意味を見出せない!といった半ば呆れた様子の響きがあったし、聞けばTVモニターに繋いで視聴することも可能とのことで、しだいにメリットも大きいということがわかってきました。

友人の中には、今どきのネット環境に付随する各種ポイントやクーポンにやたらくわしく、どれが損でどれが得かということに夫婦揃って通じているおかしな二人がいて、中でもその奥さんはよく聞けばまさにこの分野の生き字引的な存在らしいことを後に知りました。
消費者が躍らされているだけで期待するような実質的なメリットはないものから、逆にこれはスゴイ!というようなものまで、沈着冷静な分析と意見をもつ、それはもう畏れ入りましたという意見の持ち主なのです。
旦那さんの方も相当な猛者で、聞けばいつも夫婦バラバラに得なものを探し出し、しかも相手には積極的に教えないという、一風変わった戦いが繰り広げられ、会計の時などにサラリと使ってみせて相手を驚かすというような滑稽な勝負をよくやっているとかで、旦那さんのほうがいつもわずかに負けているそうです。

その二人が口を揃えて言うには、AmazonPrimeは絶対にお得なのだそうで、私もあの二人が言うのなら間違いない!というお墨付きを得た気分で、背中を押されてついに入会の運びとなりました。画面上から申し込み、TVモニターに映すためのステックやリモコンの入った機器を購入して、それをTVに差し込んで設定するというものでした。

冒頭に述べたように、こういうことに疎い私は設定にかなり手間取りましたが、それをどうにか乗り越えると、そこには広大なる娯楽の海が広がりました。
あらゆるジャンルの映画やドラマがひしめいて、好きなものを選んで(検索機能もあり)自由に楽しむことができるというもの。
もちろん、世界中のすべての映画があるわけではないし、常に入れ替えもあれば、新作も随時投入されていて、これはたいへんなものであることは直ちに納得できました。
昔ならレンタル店に出かけて行って、DVD(さらに昔はビデオ)を選んでは借り受けて、見終われば再び返却に行くということをやっていたことを思えばまさに隔世の感があり、いうなればビデオ店がそっくり一軒自宅にやってきたようなものです。

これを機に、日常生活の中で映画やドラマを観る時間が圧倒的に増えましたが、そこでまずしみじみと感じることは、個人的な感想としては日本と海外の作品では埋めがたい大差があるということでしょうか?
もちろん、海外の作品でも非常にくだらないB級映画のようなものもあれば、日本映画でもしっかりと練り込まれた力作がないこともないけれど、全体として日本のこの分野は圧倒的に国際基準からは遅れていることをひしひしと感じることは事実です。

さらにその差が激しいのがドラマの分野で、海外ドラマには見応えのある質の高い素晴らしい作品がいくらでもあり、考え込まれたストーリー、コストのかけ方、美しい映像、小道具に至るまで神経の行き届いたリアリティの追求、そしてなにより優秀な俳優陣による素晴らしい演技などには瞠目させられることしばしばです。
それにひきかえ日本のドラマは、率直に言って浅薄で幼稚で欺瞞的で、ほとんど進化もなく、まるで学芸会のような印象しかありません。
役者もこれでプロか?と思うような単純で子供っぽい演技やセリフ回しで、内容も安直なファンタジーで視聴者のレベルが透けて見えるようで、この面は世界基準でいうと、もはや何周も遅れていると感じます。
日本という島国の縮こまった環境や、ダイナミックなことの苦手な民族性もあるのかもしれませんが、なんであれ挽回は容易なことではない気がします。

日本といえば優れたアニメが世界を牽引しているというような話はずいぶん前から聞いており、それは結構なことではありすが、個人的にはやはり実写の世界でも、もう少し本気で勝負をすべきではないかと思います。

私がネットの動画配信を見るようになってまだ一年も経ちませんが、これは一度経験したら、決して昔には引き返せないものだと思います。