拭き取り無し

少し前の事ですが、友人と電話でしゃべっていると、洗車に関して新情報が寄せられました。

マロニエ君はむかし、ちょっとした洗車マニアだったのですが、さすがに最近ではそれを発揮することも激減し、ごくたまに仕方なく車を洗っているに過ぎません。
ちなみにマロニエ君は、身についた愛車精神の観点から、いかなることがあっても洗車機に車を突っ込むというようなことはしませんから、この点だけは今でも洗車=自分での手洗いを貫いています。

むかしは洗車後はワックスをかけるというのが、いわばこの道の常道で、ワックスのかけ方にもさまざまなワザやノウハウがあったものですが、時は流れ、そのうちコーティングの時代がやってきます。

ワックスでは文字通りのカルナバロウでできた固形物を塗装面に薄く塗り、まさに今だというタイミングで拭き上げて深い艶を出すのが目的でしたが、コーティングの時代になると仕上がりの美しさと同時に塗装面の保護という意味合いを帯びてきて、ただギラギラ光らせて喜ぶ時代から、その目的も複合的なものへと変わって行きました。

マロニエ君にも長年の経験から、これだと決めているコーティング剤があって、もうずいぶん長いことこれ一筋でしたが、このところ新製品にはすっかり疎くなっていました。

ところが、友人の情報によると、もはやその手のコーティング剤は使っていない由で、いま流行の「拭き取り無し」タイプを使っているのだそうで、これが話によるとなかなか良さそうで、聞くなり試してみたくなりました。

もともとマロニエ君は、「カーシャンプーと同時にワックス効果がある」とか、「水洗いナシで汚れを落として艶を出す」などという便利型の製品は、自分の経験からろくなものがなく、要するに妥協の産物だということを知っていましたから、この手の拭き取り無しタイプもてっきりその手合いだと思い込んでいて、存在だけは知っていましたが、まったく見向きもしていなかったのです。

しかし、考えてみると使いつけのコーティング剤もまだ販売はされているものの、既にずいぶん古い製品ですから、世の中の他のジャンルの発展ぶりを考えてみても、この分野とてかなり進化していても不思議はないと思われました。

洗車で最も大変なのは、ワックスにしろコーティング剤にしろ、その拭き取り作業にあるわけで、時間もかかり、それなりに集中力と体力を要し、ただやみくもに頑張ればいいというものではなく適正な技が要求される作業で、これを満足に仕上げるのはなかなか大変です。そこが洗車の醍醐味だといえばそうですが、かといってその大変な労力が激減されるのであれば、やはり今の自分には魅力だとも思いました。

友人はマロニエ君が(かつての洗車マニアなので)満足するようなものではないかも…と言いながらも、その製品名などを教えてくれて、久しぶりにすっかりその気になり、いそいそとカーショップへ赴きました。

ところが、店頭には同種の製品があれこれと並んでおり、友人が使っているというものの他にも良さそうなものがいくつかあって、これは即断せず、いったん引き上げて調査をしてから出直すべきだと直感的に感じ、このときはなにも買わずに帰ってきました。

その夜、さっそくネットでこの分野を検索してみると、やはりいろいろと情報が出てきて、中には自分の車を試験台にして、あらゆる種類の「拭き取りなしのコーティング剤」をテストしているディープなマニアのサイトまでありました。
この人は、もちろんシロウトですが、なんとメーカーからも一目置かれて新製品など使ってみないかと申し出られるほどの人物のようです。作業性や艶、耐久力、値段など実に10項目に及ぶ採点までしていて、さすがに参考になることが満載でした。

驚いたことには、洗車そのものを楽しむクラブまで存在していて、いやはや、どの世界も道も極めるということはなんと奥深い、楽しい、そして馬鹿馬鹿しい世界かと、呆れつつも共感させられて笑ってしまいました。