マイペース

大病院のことはよくわかりませんが、開業医レベルの病院に行くと、「うわ、でたぁ!」と思うことがときどきあります。

自分よりも順番が前の人に話し好きの高齢者の方がおられたりすると、受付、診察、会計、薬局という一連の流れの中で、後続者は甚大な影響を被ることがあります。

この手の方は、むやみやたらと話し好きで、人とみればあれこれ喋り出し、おまけに周りの空気を読むなんてことは天晴れと云うほどなく、聞えてくるのは、大半がその場で直接何の関係もないような話を中心とする、一方的おしゃべりのオンパレード。

受付で診察カードと保険証を提示するだけで済むことが、まずこの場からおしゃべりはスタート。前回来たときからどうしたこうしたというような茶飲み話みたいなものがはじまります。
さらにヘビー級の方もいらっしゃいます。
傍らに次の順番を待っている人がいるなんてことは頭の片隅にもないらしく、自分の話が一段落つくまで決してこれを中断して次の人に譲るなどということはないまま、ただ自分の気が済むまでしゃべりまくります。

診察室でも、そういう高齢者の方の一方的なおしゃべりはとどまるところをしりません。「先生、この前の○×がどうしたこうした…」といった調子からはじまって、病状というよりは主に日常生活そのものをしゃべっているようです。医師のほうでもハイハイといいながら、できるだけ早めに切り上げようとしている気配を感じるのですが、そんなことはまったく通じません。
ときには、医師と看護士の両方を聞き役にして、自分のことを際限なくまくしたてています。やっと終わり、医師が「はい、じゃ、それで様子を見てくださいね」などと云うも、「あっ、そうそう、それと…」といった具合に、ここからまた延長戦です。
ひどいときなどこういう方ひとりのために30分近く待たされたこともあります。

それに耐えて、ついに自分の名が呼ばれて診察室に入ると、いつもの薬がなくなりましたというような場合は、「じゃあ前回と同じでいいですか?」「はい」というやりとりで事は決着。マロニエ君の場合は1分も診察室にいないようなことになり、この差はなんなんだ!?と、まるで自分がひどく損でもしているような気分になってしまいます。
べつに診察室に長く滞在することが得なわけじゃありませんけれども。

それから会計ですが、ここでも先行する高齢者の方の猛烈おしゃべりにブロックされて、窓口はべちゃくちゃ話に占領され、その間のストレスと来たら相当のものになります。病院側も「アナタはお話が長いので、次の方を先にお願いします」とは言えませんから、苦笑いを浮かべながら消極的に話の相手をしているのがこちらにも伝わります。

これで終わりではありません。
次なるは薬局が控えていて、この流れである限り、ずっとこの順番がついてまわります。そこでもまったくひるむことなく、次々に相手を変えながらしゃべりのテンションはまったく落ちません。
本来薬局の受付では、病院から出た処方箋を渡すだけなのに、この場面で、なんでそんなにしゃべることがあるのか、まったく理解の外です。薬の準備ができる間も立ったまましゃべり通しで、薬剤師が薬をいちいち説明をするのに乗じて、またも以前の薬がどうだったけど今度のは…とか、寒くなったらこうなったとか、先生に云ったらこういわれたのはなんでだろうか…というような話が延々と続きます。

それも1分2分ならいいですが、いつ果てるともなくしゃべり続けるのですから、こうなると気分が悪くなってくることもあって、完全に社会迷惑だと断じざるを得ません。
病院の受付からはじまって、自分が薬を受け取って、すべてが終わるまでに小一時間もかかるようで、その間、こちらの神経はイライラヘトヘトで、全身がなんとも収まりのつかない疲れに締め付けられて硬直してしまいます。

いっそ薬局なんだから、精神安定剤のサービスでも追加して欲しいところですが、そんな事があるはずもなく、ただただ「運が悪い」としか云いようがありません。この手の高齢者のスタミナはとてつもないもので敵いっこありません。
どうか、いつまでもお元気で!