新聞によると、3.11の震災では各地のホールや劇場などにも様々な被害があったようです。
これはある程度予想はしていたものの、やはりそれは予想では終わることはない、まぎれもない「事実」のようです。
全国約1200の公立ホールで構成する「全国公立文化施設教会」が発表したデータによると、今回の震災で大小何らかの被害を受けた公立ホールは197にものぼり、そのうち「甚大な被害」を受けたホールは31ということで、中には建物ごと流されたものもあるということでした。
この数字には挙がらない公立以外のホール、プライヴェートホールなどを含めるとさらにその大変な数になるはずです。
また、建物に被害がなくても、震災以降は予算のめどが立たなくなるなどして再開の見込みが立てられないホールもあるということでした。ホールや劇場は使わなくても維持管理だけでもおそらくかなりの費用を必要とするため、このような問題が次々に発生しているものと思われます。
今ごろになって、「ははあ、そういうことだったのか」と納得がいったのは、例年ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの会場となっている東京国際フォーラム(大小7つのホールと会議室などを擁する)も余震による電気系統の不具合から貸し出しに著しい制限が発生し、昨年の来場者数約81万人から、今年は一気に15万人弱までに激減せざるを得ないほどの規模の縮小を強いられたというのです。
鳥栖や新潟のような、これまでこの音楽祭とは縁もゆかりもない地域で突如開催されることになった地方版開催の背景には、メイン会場である東京国際フォーラムでこのようなことが発生したという裏事情があったようです。
また、新聞にはその内部写真まで掲載されていて驚いたのが、川崎市最大の音楽拠点、ミューザ川崎シンフォニーホールでした。
東北ではないものの、やはり3月の地震で客席上の天井仕上げ材がすさまじく落下して、写真ではまるでホール全体が崩壊したかのような無惨な光景であったのには驚かされました。
さらに照明やパイプオルガンにも大きな損傷があるとかで、なんと、むこう2年間の閉館を決定したそうです。
当然ながら公演のキャンセルも相次ぎ、多くのホールが運営面でも大きな打撃を被ることは避けられず、さらにそのもうひとつの問題は、多くのホールが竣工したのが1995年前後が最も多いのだそうで、震災とは別問題に、それらが一斉に改修の時期を迎えているということも折悪しく重なっているようです。しかも費用は優十億から100億かかるとかで、まさに泣きっ面に蜂という状態のようです。
仮に無事改修などが終わったとしても、現在の社会状況から見て、以前のようにお客さんが来てくれるという見込みが立てられないようで、なにもかも震災以前と同じというわけにはいかないという深刻な問題を抱えているらしく、音楽ファンとしてもなんとも心が暗くなるような状況のようです。
福岡でもこの1年ほどは、なにやらすっかりコンサートの数が少なくなっていると感じていたところ、3月の震災を境に、さらにそれが激減しているのが目立つようになりました。
むろん福岡のホールは幸いにして今回の地震の被害はないわけですが、現在の社会の雰囲気がなかなかコンサートなどを盛んに行おうという流れではないようで、この状態はここ当分は解消されそうにもない感じです。
テレビニュースをみれば、あいもかわらず福島原発事故や被災者の深刻なニュースが冒頭から流されますが、これはもちろん大変な社会問題であることはよくよくわかるものの、すでに災害発生から100日以上が経過して、1日も休むことなく連日連夜、このような先の見えない暗い話題ばかりをトップニュースとして際限もなく流すばかりでは、世の中に与える精神面での過剰なストレスという、いわば第二の人災のような気がしてくるのです。
もちろん福島原発は収束を見ておらず、抱える課題も甚大ですが、もう充分に国中が喪に服したことでもあるし、そろそろ動きの取れるエリアでは、被災地の為にも前向きに腰を上げてもいい時期に来ているような気がしますが。
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