バックハウスの新譜

実に思いがけないCDが発売されたので、さっそく購入。
なんとバックハウスが死の3か月前にベルリンで行ったコンサートのライブで、これまでまったくその存在すら知られておらず未発売だったものです。
2枚組の収録曲はベートーヴェンのピアノソナタ4曲で、第15番ニ長調Op.28『田園』/第18番変ホ長調Op.31-3/第21番ハ長調Op.53『ワルトシュタイン』/第30番ホ長調Op.109というもの。

この演奏時、マエストロは85歳という高齢にもかかわらず、例のあのくっきりとしたとした調子で、時には情熱的に、時にはリリックに、総じて雄渾にベートーヴェンを弾いているのはほとんど信じがたい事でした。
デッカに残したあの名盤のような完成度こそないものの、素晴らしく鮮やかな録音により、生きた生身の老巨匠が今まさに目の前の至近距離にいるようで、こういうものを聴くとあらためて録音技術の発達には惜しみない感謝を送りたい気分になります。

使用されたピアノがまた嬉しい誤算で、バックハウスのピアノはベーゼンドルファーというのは、もはや常識中の常識で、この両者を引き離すことはできないものと思っていましたが、なんとこのコンサートではベヒシュタインを使っています。一流のピアニストになると楽器の個性を超えて「その人の音」というのをもっているものですが、ベヒシュタインを弾いてもバックハウスは自分の音を無造作に鳴らしているのはさすがだと感心させられました。

それでもベーゼンドルファーにある柔和さと引き換えに、ベヒシュタインの単刀直入なドイツピアノの音は個人的にはより鍵盤の獅子王と言われたバックハウスにはとても合っているように思えました。

それにしても、バックハウス、ベートーヴェン、ベヒシュタイン、ベルリンとまさにのけぞりそうなドイツずくめで、これだけ条件が揃うのも珍しく、ヒトラーじゃなくてもドイツ万歳!という気分になりました。
スタジオ録音では聴かれなかったワルトシュタインでの一期一会のような生命の燃焼は圧巻で、この日から3カ月を待たずにあの世の人になろうとは…。
最近は、ときどきこういう思いがけないものが発売されるのは単純に嬉しい限りですが、マロニエ君のCDエンゲル係数は上がるばかりなのが我ながら恐ろしくなります。

バックハウスの新譜」への1件のフィードバック

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    カワイピアノの系統については

    http://www.kawai.co.jp/piano/grand/rx/pdf/GP_20100112.pdf

    の11ページをみていただくとわかります。オオシロにある700号はKGの前の800号と同世代で独立アリコートをもつものがあります。

    その後KGは普及品としてベヒシュタインのコピーのアリコートなしといったん品質が落ちます。ディアパソンの劣化版コピーです。KGの品質はずっと問題がありました。いわばディアパソンの量産性をあげた粗製濫造の気配があります。

    一方S&Sの影響を受けた手作りセミコンGS(シュワンダー)が登場、その後量産品CA(ヘルツ)となります。

    フルコン800号はd174とCFの影響を受けたEX(ヘルツ)となり、途中手作りのセミコンRX-A、R-1が出現します。

    KG(シュワンダー)は最終型KG-N(ヘルツ)からベヒの影響を脱出、CAと合体してアリコート付となります。このころカワイはボストンを作ることでS&Sの秘密を握ります。

    その後KG-NはRXと名前がかわりますが、フレームは角穴のまま。

    1999年にRXはスケールデザインがかわり、丸穴となりピン板付近に左右を縦貫するフレームが登場しヤマハのCに似たデザインとなります。同時に高級版SKが誕生します。SKはRXより手作りが多く、寝かした材料を使って整調、整音、鍵盤ダンパー錘が一品一品に調節されたものです。

    したがってお持ちのGSはシュワンダーながらセミコンの作りなのでいいピアノです。アクションはディアパソンの木製ヘルツ式のウイペンに変えることができますよ。作りのよいGSを弾かれていたので他のピアノの良し悪しが良くわかるのだと思います。

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